家康紀行(50)創意工夫で魅力を発信・清水港

前号では日本夜景遺産の認定を受け、ローカル線と沿線の工場群が織りなす夜景を新たな地域資源と位置付け、まちおこしに取り組む富士市の事例を取り上げた。
今週は富士市の西隣、静岡市清水区の清水港と、そこで水揚げされる新鮮な海の幸を使った特色ある取り組みを紹介したい。
静岡市清水区は清水港を中心に海運の要所として発展した港町で、静岡茶の輸出など国際的にも重要な港に指定されている。
この清水港に、仲卸業者らにより開設された「清水魚市場・河岸(かし)の市」という施設がある。冷凍マグロの水揚げ日本一を誇ることから、マグロをはじめ近海の魚介類、春と秋の時季には名産の桜えびを販売する市場が並び、食事処もある。
食事処がある「まぐろ館」には十数店舗の店があり、通路にはまぐろをふんだんに使った料理の見本が並び、店員らが自店の魅力を観光客らに威勢よくアピール。
筆者が訪れた店では、マグロを中心とした刺身の盛り合わせに「生しらす」が添えられていた。生しらすは新鮮さが武器。和歌山でも食せる店舗が増えてきたが、神奈川県の鎌倉市や藤沢市、静岡県の焼津市などでは、提供する食材の鮮度の良さを示すサインとしての意味合いを持ち合わせているように感じる。
さらに、刺し身に添えられる大根の「つま」は太めに切られてあり、ほのかにかんきつ系の風味を感じるドレッシングをかけ、大根サラダとしても楽しめる。ついつい残しがちである「つまもの」であるが、創意工夫により地域の味を引き立てるインパクトのある食材に変わる。
和歌山県と近い気候や特産品を持つ異なる地域の食にふれることで、目立たずとも消費者へ魅力を訴え掛けるすべが見えてくる。

(次田尚弘/静岡市)