伝統の「能」を学ぶ 和大で小林さんが講義
教員を目指す大学生に日本の伝統芸能にふれ、将来の指導に生かしてもらおうと、和歌山大学(和歌山市栄谷)でことしも、同市の重要無形文化財保持者の観世流能楽師・小林慶三さん(86)を講師に迎えた講義がスタートした。
教育学部の菅道子教授と上野智子准教授が担当する中等音楽科の授業の一環で、6年目の取り組み。中学校の音楽の教科書にも採用されている「羽衣」の謡(うたい)を中心に、仕舞を含め全4回の講義が行われる。
9日にあった初回は、大学院生を含め12人が受講。小林さんは能楽が生まれた時代背景や成り立ちを解説し、謡は七五調のリズムであることや、謡本に記された記号の謡い方、独特の音階や節について手本を示しながら丁寧に指導した。
「西洋音楽の声の出し方とは違うので、体で覚え込むように」とアドバイス。仕舞の稽古では、学生たちは扇を手に肘を張った基本姿勢で、重心を落としてゆっくりと進む「すり足」に挑戦。畳の上を、そろりそろりと歩いた。
同講義は学生自ら学びを深める自主演習科目で、「日前宮薪能」の鑑賞も予定しているという。
3回生の品川充暉さん(20)は「音の取り方や記号の読みは難しいけれど、少しでも身に付けられるよう頑張りたい」、サックスを演奏しているという三好里依さん(20)は「音階の種類は少ないのに、表現は幅広くて奥が深い。いろんなジャンルの音楽にふれたいという思いが強く、自分の活動にも生かしていきたいです」と話していた。