読書好きの子ども育成 岩出小に文科省表彰

 和歌山県岩出市清水の市立岩出小学校(原寿宏校長)が、読書好きの児童育成に力を入れている。保護者が毎週ボランティアで読み聞かせを行い、図書室の開室時間を拡大するなど、本に親しみを持ってもらうための環境を整備。4月には文部科学大臣から2018年度「子どもの読書活動優秀実践校表彰」を受けた。図書室の貸し出し冊数も増えており、教職員や保護者は手応えを感じている。

 市が教育目標に掲げる「学力向上と読書活動の推進」に合わせ、児童が本を身近に感じ、読書習慣を身に付けられるよう、取り組んできた。その一つが約10年前から続く保護者による朝の読み聞かせ活動。現在は保護者15人で構成するボランティアグループ「読み聞かせたい」のメンバーが週ごとに対象学年を決め、始業前に20分程度、絵本や小説などを読み聞かせている。

 本の選定は、ひなまつりやクリスマスなど季節の行事に合わせた内容の他、子どもを狙った凶悪事件が報道された時などは、登下校中の安全や命の大切さを訴える本を選ぶなど、社会の動きを見据えて工夫を凝らす。防災にまつわるエピソードや昔話の紹介にも力を入れる。

 さまざまな事情で家で読み聞かせをしたくてもできない家庭もあることから、グループ代表の加藤理恵さんは「子どもが家に帰って、読み聞かせで聴いた本の内容を親に話し、親が『図書館に行ってみようか』と子どもを誘うようになってくれたらうれしい」と、読書活動の輪が家庭に広がることに期待を寄せる。

 読み聞かせの他、児童向けの本棚を廊下や教室にも配置し、本との距離が近い環境づくりも心掛ける。図書担当の教諭が市立図書館の司書と連携し、本の魅力を語り合えるビブリオバトルやブックトークも実施。図書室をより利用しやすくしようと、従来の昼休みに加えて、2限目と3限目の間の20分の休憩時間も図書室を開放し、図書の分類法も一般の図書館と同じ十進分類法に変更した。

 文科相表彰は、こうした取り組みが評価されたもので、教職員や保護者に喜びが広がった。図書担当の上村奈於教諭は「図書室の開室前に20人ぐらい児童が並んでいることもあります」と取り組みの手応えを話す。

 図書室の1年間の貸し出し冊数は、15年度の7779冊から17年度は8649冊に増加し、児童が読書を楽しみ、学ぶ機会と時間は確実に増えている。

 原校長は「子どもたちが本に親しめる環境が整ってきました」と話し、今後も保護者と協力しながら、より充実した読書活動を進めていきたいとしている。

文科相表彰の賞状を手に「読み聞かせたい」の保護者と原校長㊧

文科相表彰の賞状を手に「読み聞かせたい」の保護者と原校長㊧