日本100名城を完全制覇 海南の下津さん

和歌山県海南市日方の下津修三さん(73)が4年前から挑戦していた「日本100名城」(日本城郭協会選定)全てを訪れ「完全登城」を達成した。下津さんは「自己満足の世界ではありますが、ようやく制覇できました。若い方にも、もっと優れた文化財や歴史に興味を持ってもらいたいです」と笑顔で話している。

もともと歴史好きでお城巡りが大好きだった下津さん。ある時、山形城で出会った男性が持っていた、日本城郭協会の公式スタンプ帳付きの単行本が目に留まった。

下津さんは、スタンプラリーの存在を知りながら挑戦する気持ちはなかったが、男性がすでに40ほどの城を回っていると聞き、城郭ファンとして「わしも負けてられやん」と心に火がついた。

2014年9月に和歌山城からスタート。個人でプランを立てたり、旅行会社のツアーを組み込んだり。遠方へは2泊3日を基本に計画し、ことし5月中旬の岐阜城で100城を制覇。全国で2158番目の達成者に認定された。

100カ所巡った中で、最も魅了されたのは日本三大名城の一つ、熊本城。これまでに3、4回は訪れたといい「石垣が優美で見事。ただ2016年の熊本地震の際には、大きな被害に心が痛みました。復興のシンボルとして再建されるのを待ち望んでいます」。

季節のいい春や秋を中心に出掛け、「冬は冬眠」。写真が趣味で、できる限り青空に映える城の姿を収めたいと、常に天気予報をチェックして日程を決めていたそう。

旅先で人の温かさにふれることも。現地で出会った人と意気投合し、城内を案内してもらったり、足を痛めた際、道を尋ねた人に車で送ってもらったりしたこともある。

最も難関だったのは、昨年7月に行った北海道の根室半島チャシ跡群。目的地は遠く、空港からレンタカーを走らせ、2泊を挟みながら、やっとの思いでたどり着いた。

お城といっても、見どころはさまざま。下津さんは特に、形や大きさの違う石が絶妙なバランスで高く積み上げられているのを見ると、築城当時の技術に思いをはせるという。「建築工事も、今のようでなかった時代、昔の人は、えらかったんやなぁと思います」。

昨年には、同協会が「続日本100名城」を発表。下津さんは「いったん休憩して、健康で体力が続く限り、また新たに100カ所を回ってみたい思いもありますね」と意欲的。日本各地の戦跡や資料館を訪ねる慰霊参りも併せて行っている。

折りしも、ことしは地元和歌山城の天守閣再建60周年の節目。「全国の城を回ったけど、紀の川や緑の山並み、若い時から何べんも行ってる和歌山城天守閣からの360度の眺めは最高」と下津さん。「和歌山城はまちの中心部にあり、和歌山の人に親しみの深いお城。最近は城内や周辺の整備も進んでいるようなので、全国、海外からもっとたくさんの人に訪れてもらいたいですね」と期待を寄せている。

100名城達成のスタンプ帳を手に下津さん

100名城達成のスタンプ帳を手に下津さん