今にも動きそう 前田さん羊毛フェルト展
ふわふわとした毛並みで、今にも動き出しそうな愛らしい動物たち――。羊毛フェルトでペットそっくりに再現した作品の展覧会が31日まで、和歌山県和歌山市禰宜のケーキサロン・マニエール和佐店で開かれている。今回が初の作品展となる制作者の前田匡美さん(55)=同市小倉=は「温かみのある羊毛フェルトで、『うちの子』の記憶を残したい、もう一度会いたい、そんな皆さんの願いにお応えできれば」と話している。
前田さんは4年前、行きつけのドッグカフェで羊毛フェルト作りを体験。飼い犬をよりリアルに作りたいと独学で制作するうち、周りから「うちの子も作って」と依頼を受けるようになった。
ウール100%の羊毛フェルトを使用し、ニードルと呼ばれる専用の針で、チクチクと数千回から数万回刺してフェルト同士を絡ませ、形づくっていく。
作品は小さなものから、等身大まで。「『きれいに仕上げよう』ではなく、『そこのお家の子に近づけたい』という思い」と前田さん。写真や飼い主への聞き取りをもとに、色の濃淡や毛並みの特徴など、微妙なニュアンスも忠実に再現しようと、人間用の毛染めで染めることもある。
その完成度の高さに、多くの依頼者が涙を流して作品を迎えるという。あるとき、愛犬を亡くした飼い主がこれまでにトリミングした毛を大切に保管しており、それを使って作ったことも。頭をなでたり、話し掛けたり、実際に触って存在を感じられるのも大きいという。インスタグラムで動物たちを紹介していたところ、アメリカやフランスからも依頼が入るようになった。
今展では愛犬のミニチュアピンシャーのPUMAちゃんをモデルにした作品、カエルや金魚、干支(えと)を題材にしたものなど、約40点を展示。
前田さんは「ペットロスで心を痛めている方がいらしたら、少しでも心が和らいだり安らいだりすればうれしいです」と話している。
午前9時から午後7時まで。問い合わせは同店(℡073・477・3155)。