輪廻の絵画と空間芸術 若手2作家が初個展
和歌山県和歌山市満屋のギャラリーアクアで19日まで、若手作家2人の作品展が開かれている。作者は同市の道上(みちうえ)恵美さん(28)、小野明日香さん(25)で、それぞれ初の個展。2人は同ギャラリー主催で昨年秋に行われた「スクエア展」で、優れた若手作家に贈られる「金の卵賞」を受賞し、副賞として個展の機会を得た。
道上さんはみなべ町出身で、北海道教育大学を卒業。昨年の二科展で新人奨励賞を受けている。
主なテーマとするのは、受け継がれる命やつながりの感覚を伴う、輪廻(りんね)転生。二科展受賞作「流転」(100号)は、奈良県の大台ケ原で目にした群生するコケに、生命力を感じて生まれた大作。点描で細やかに表現された緑の物体は、まるで生き物のようでもあり神秘的。
「切り株の木片など、土に還っていくものに心引かれます」と話し、これまでは高野山に足を運び、題材にすることが多かったという。「表現に限界を感じ始めた頃、大台ケ原に行き、力強いコケの姿に『私はこれを描きたかったんだ』と強く思いました」と振り返る。
油彩やアクリル画など13点が並び「自由に創造力を膨らませて楽しんでもらえれば。会話が弾み、絵が皆さんの心を動かすものであればうれしいです」と笑顔で呼び掛けている。
一方、小野さんは奈良芸術短期大学洋画コースを卒業。これまでグループ展などで精力的に作品を発表し、今回は初のインスタレーション(空間芸術)に挑戦している。
「幸せの王国」と題したスペースには、ベッドや机などが配置され、まるで誰かの部屋を訪れたかのよう。雑誌やCD、化粧品や衣類などがさり気なく並び、くつろぎながら楽しめる。壁に飾られた絵画のモチーフは、無重力の世界を自由に泳ぐ魚や、少しおどろおどろしい人物などで、独特の空間。小野さんは「興味を持った物に触れて、皆さんそれぞれの感覚で過ごしてもらえれば。写真撮影もどうぞ」と話す。
壁や棚の引き出しには、「思いやり」「あなたの帰りを待つ」など、絵画のタイトルにもなっている言葉が書かれた小さなポケットがあり、その中にある手紙を開くと…。随所に創造力をかき立てる仕掛けがちりばめられ、小野さんは「部屋の住人を想像したり、共感したり、空間に自分を重ね合わせながらお楽しみください」と呼び掛けている。
午前10時から午後5時まで。問い合わせは同ギャラリー(℡073・463・4640)。