被災なしでも避難 南海トラフ地震臨時情報

政府の中央防災会議は11日、南海トラフで大地震が発生し、さらに巨大な地震が続く可能性がある場合に、震源域内の被災していない地域の住民にも約1週間の避難を求めることなどをまとめた報告書案を示した。政府は、来年にも策定予定のガイドラインに沿って、太平洋沿岸地域を中心とする自治体や企業などに新たな防災計画の策定を求める。

報告書では、巨大地震発生の恐れが高まっていると判断できる「異常な現象」として①半割れ②一部割れ③ゆっくりすべり――の3ケースを想定し、これらが確認された場合は気象庁が臨時情報として発表する。

半割れケースは、南海トラフの想定震源域内で大規模地震(マグニチュード8クラス)が発生し、残りの領域で大規模地震の発生可能性が高まったと考えられる状況。最初の地震で被災していない場合でも、次の地震の津波からの避難が間に合わない地域の住民や、間に合わない可能性がある地域の高齢者らはあらかじめ避難するとし、期間は「1週間程度を基本」としている。

一部割れケースは、大規模地震に比べて一回り小さい地震(M7クラス)が発生した後に、より大きなM8クラス以上の地震が発生する可能性がある状況。その後の巨大地震に備えた避難までは求めておらず、避難場所の確認や家具の固定などの日常の備えを再確認し、必要に応じて自主避難するとしている。

ゆっくりすべりケースは、プレート境界面での基準を超えた大きな揺れ動き「ゆっくりすべり」が通常とは異なる場所などで観測された状況。この場合も政府は注意を促す程度で避難を求めず、対応は住民や企業それぞれの判断にゆだねるとしている。

南海トラフ巨大地震に関する臨時情報は、東日本大震災の巨大地震を予知できなかったことを踏まえ、東海地震の予知を前提とした大規模地震対策特別措置法に基づく防災対応を約40年ぶりに見直し、導入された。

中央防災会議の最終的な報告書は年内に政府に提出される予定。今後、自治体や企業は臨時情報が出た場合の具体的な防災計画づくりを進めることになる。政府は、来年にも計画づくりの手順や検討すべき項目などを示したガイドラインを策定する。