だんじりグルメ「くるみ餅」
前号では、岸和田歴史的まちなみ保全要網の制定に伴い、紀州街道を中心とした歴史的建造物の保全と魅力あるまちづくりの取り組みを取り上げた。今週は、だんじり祭に欠かせないとされるこの地域特有の食文化を紹介したい。
秋の風物詩ともいえるだんじり祭。この季節ならではの「だんじりグルメ」がある。一般的に三つあるとされ、一つはワタリガニ。この時期はワタリガニが卵を持つ旬の時期。近くの漁港で水揚げされるシャコエビを使った塩ゆでなども食べられ、だんじり祭の別名として「カニ祭り」と呼ぶ人もいるとか。
二つめは関東煮(かんとだき)。いわゆる「おでん」だが、客人が多く来訪し大いに盛り上がるこの時期、大勢の客人に振る舞うためだそう。夜になると涼しさを感じ始める頃。日本酒で一杯やるには最高だろう。
そして三つめが、くるみ餅。これが実にユニークなのだ。「くるみ」という言葉から、クルミが入っている餅を連想してしまうが、クルミは一切使われていない。その名の由来は、大豆を原料とした餡で白玉団子をくるんでいるというもの。
かつて水田や田畑の栄養分(窒素)を出す大豆(畔豆)が畔に植えられており、大豆が豊富に存在したことから、だんじり祭の趣旨である五穀豊穣、豊作を祈り、作られるようになったという。
とろみがあり甘過ぎないあんが白玉団子にまとわりつく、あんが主役の郷土料理。一般にも販売され地域を代表するお土産としても親しまれている。紀州街道を往来する和歌山の人々もこの味に舌鼓を打っていたことだろう。
(次田尚弘/岸和田市)