青島の新人気スポットも 山東省視察ツアー
和歌山県と中国・山東省文化・旅游庁が共催した同省のプロモーションツアー「ファムトリップ」は23・24日、省内最大の経済力を誇る国際港湾都市の青島(チンタオ)市を訪問し、全日程を終了した。世界的なビールブランド「青島ビール」の博物館や、昨年6月に始まった新たな観光の目玉であるライトアップショーなどを見学し、省内の旅行業者、市文化・旅游局幹部らと意見交換会を開催。観光をはじめとする相互交流の促進に向け、省の多彩な魅力を日本・和歌山に発信していく必要性を確認し合った。
人口約970万人の青島市は、歴史的に日本との関係が深い。日清戦争後の講和条約に干渉したドイツが1898年に租借地としたが、第1次世界大戦で日本が占領し、1919年のベルサイユ条約でドイツから権益を引き継いだ。
青島ビールは、租借地に駐留するドイツ軍人らのために03年に製造を開始した中国で最も古いビール。博物館は誕生100周年の2003年8月にオープンし、西洋式の街並みが多く、異国情緒漂う市内でもひときわ美しい欧風建築として目を引く。
館内には、青島ビールの歴史や製造方法、過去の醸造機器などが展示され、現在の製造ラインを見ることができる。無ろ過の新鮮なビールを試飲できるのも人気となっている。
23日、香り高いビールの味と歴史を味わったファムトリップ一行は、市文化・旅游局対外交流与合作処の范輝処長との夕食会の後、夜の新しい観光名所であるライトアップショーを見学した。
北京オリンピックの競技会場となったヨットハーバーに面する高層ビル群が、4~10月の毎日とその他の期間の週末にライトアップされる。ビルの壁面に浮かぶ壮大なプロジェクションマッピングもあり、グラスに見立てたビルにビールが注がれる様子、中国の著名な建造物、走り抜ける高速鉄道など、さまざまな映像が展開された。
中国、ロシア、インドなど8カ国が参加する上海協力機構のサミット開催を機に始まり、まだ1年のショーで、中国ではSNS映えスポットとして人気だが、日本ではまだ知る人も少ない。
この日は、漢画像碑博物館も視察。約2200年前から400年にわたり栄えた漢王朝の時代、レンガや石に暮らしの様子や神々などを刻むことが盛んに行われ、当時の生活や文化を知る資料となっている。それらを専門に収蔵している同館をはじめ、市内、省内には多様な博物館があり、誘客に取り組んでいる。
24日は、省内の旅行業者と范処長、21日に済南市で一行を歓迎した省文化・旅游庁の孫茂田副処長が再び駆け付けての意見交換会を開催。
省内の旅行業者は、日本からの観光客が減少し、日本人をガイドする人材の確保が難しくなっているなどの厳しい現状を伝えるとともに、トイレや食品安全、大気汚染など日本で不安視される点が大きく改善されていることを強調。日本側の旅行業者からは「観光地として十分な魅力がある。送客に力を入れたい」「衛生面などに少し偏見があったが、払拭(ふっしょく)された」などの好意的な意見とともに、知名度の低さなどから旅行商品として売りにくい現実があること、観光地の街灯をはじめ設備面の充実などを求める声が上がった。
范処長は「良いアドバイスを頂いた。山東省、青島市にとって日本は外国で2番目に大きい観光マーケットであり、大事にしている。今回の視察旅行を通じて双方向の交流が増えると考えている。私も和歌山を訪問したい」と話した。