紀州備長炭に海外オファー 窯元に商談続々
和歌山県和歌山市西庄に窯を構え、炭の最高峰「紀州備長炭」を製造・販売している㈱紀州燃料(栗栖光司代表)に、海外からの問い合わせ、注文が増加している。後継者不足が課題となっている業界にあって、技術の継承、人材育成に取り組む同社は、輸出商社との連携で新たな販売モデルの構築も見据えており、和歌山が誇る伝統産業の振興が期待される。
同社を創設した炭焼き歴40年の熟練職人、栗栖秀幸さん(71)は、息子の光司代表(42)に経営を譲った後も炭焼きの現場に立ち、後進の指導に当たる。
2014年、秀幸さんはミャンマーの北西部、インドとバングラデシュに国境を接するチン州からの要請を受け、技術指導に向かった。電気やガスなどの基礎インフラがなく、同国内で貧困率が最も高い地域に暮らし、「ものすごく真面目で、よく仕事をする」住民と共に8基の窯を造り、10人の職人を育てた。
ロヒンギャ難民問題の発生に伴う政情不安のため、10年間の滞在計画は4年で帰国を余儀なくされたが、チン州の人々とは現在も連絡を取り合っている。
ミャンマーでの技術指導をきっかけに知り合ったのが、同社製品のインターネット販売を手掛ける商社、テーナガール・ジャパン・インターナショナル・ビジネス開発㈱(橋本市柿の木坂)の永吉司代表(67)。秀幸さんの活動を報じた本紙(14年5月16日付)を見て紀州燃料を訪ね、一緒に仕事をするようになった。
現在の紀州燃料のホームページは全て日本語だが、海外からも引き合いが来ており、永吉さんは「和歌山の産業振興の一環として、伝統産業を海外へ発信できる機会になる」と期待している。