茨城県に「紀州堀」

前号では、県の木として梅が指定されている茨城県を取り上げた。和歌山県から遠く離れた地であるが、歴史をたどればつながりが見えてくる。今週から「梅でつながる茨城探訪」と題し、紹介していきたい。
紀州徳川家の祖として知られる徳川頼宣（よりのぶ）は、かつての水戸藩主。慶長７年（１６０２）伏見城で生まれた頼宣は、２歳にして水戸藩２０万石を与えられる。
慶長１４年（１６１０）駿河・遠江国（駿府城）へ転封するまでの約７年にわたり水戸藩主を務めた。藩主とはいえ、家康のもとで育てられたことから、水戸へ入ることはなかったという。
頼宣の後の藩主となる徳川頼房（よりふさ）は、頼宣の弟にあたり、水戸徳川家の祖となる人物。ここから水戸徳川家の歴史が始まる。
水戸藩主として現地へ赴くことがなかったとされる頼宣であるが、水戸市内に頼宣を思わせる名が付いたものがある。それは、水戸城の外堀の名称で「紀州堀」。理由は定かでないが、頼房が前藩主であった兄が紀州藩主となった縁から「紀州」の名を使ったという説がある。紀州堀は水戸城本丸跡から見て南西方向にあり、紀州の方角。兄を慕い付けた名なのか、何か危惧することがあり付けた名なのか、その由縁を知りたいものであるが真相は明らかでない。
紀州堀の跡は「紀州堀緑地」として水戸市が管理する公園となっている。市の中心部へ向かう国道３４９号線が堀の跡地を通り、その両側に都市緑地として整備され、広さは１万５８００平方㍍。遊歩道が整備された細長い公園となっている。水戸市梅香。水戸駅から西へ約１㌔。茨城の地に頼宣の歴史が刻まれている。　　（次田尚弘／水戸市）