家族と葛藤する女性描く 得津さん小説出版

和歌山県和歌山市有本のマナーコンサルタント、得津美惠子さんが、2冊目の小説『織部千春が消えた日』を10月1日に出版する。家族関係が壊れていく主人公の葛藤を描いたストーリーには、自身の経験も反映されている。得津さんは「心無い言葉をかける同級生や苦しみを理解しない画材店の客など、いろんな人が出てくる。小説を通して、人を思いやる心を自分に問い掛けてもらいたい」と話している。

元キャビンアテンダントの織部千春は画材商の夫・健介と娘の加奈の3人家族。名門進学校に入学した加奈は学校になじめず不登校になり、健介は美人画家と不倫し、家族は段々壊れていく。家族の崩壊と一人の女性の葛藤を描くドラマ。

得津さんは2008年に小説『春のうねり』を出版。本紙でも07年に小説『波の向こうに』を連載している。

今作はふとしたひらめきから書き始めた。加奈が不登校になる経緯は、実際に自身の娘が不登校になった経験をもとに書いており、学力最優先の進学校の様子や教員と面談したときに感じたことが、加奈と千春の心情に投影されている。作中に登場する織部家の飼い犬「梅」も昨年旅立った飼い犬ウメがモデル。ウメがいなくなって初めて大切にしていたことに気づき、本の中で家族を癒やす存在として描いた。

得津さんは千春と同じく元キャビンアテンダント。小説は日々思いついたことをメモし、誰かの目に触れて共感してもらえたらと形にしている。読書家の母の影響で本をたくさん読んできた知識を生かし、自然と情景が浮かぶような文章を心掛けている。

A6判、324㌻。税抜き819円。宮脇書店和歌山店とロイネット和歌山店、TSUTAYA WAYガーデンパーク和歌山店で販売する。問い合わせは得津さんのホームページ(http://www.eonet.ne.jp/~manner/)。

「思いやる心考えて」と得津さん

「思いやる心考えて」と得津さん