池ノ上さん文化庁長官表彰 根来寺根来塗復興
和歌山県の伝統工芸「根来寺根来塗」の保存・伝承に尽力し国の文化財保護に多大な貢献をしたとして、岩出市の塗師・池ノ上辰山(しんざん)さん(60)が文化庁長官表彰を受けた。池ノ上さんは「自分の作ったものが認められた。これからも根来塗の伝承と職人の人材育成に力を注ぎたい」と意気込みを語った。
根来塗は「中世最高の漆物」と呼ばれ、真っ赤な漆物は上の朱が減ってもその下の黒、その下の黒と高度な下地があり、長く使い続けることができる。
角が欠けにくく、沸騰した湯もじかに入れることができ、耐久性が高いのが特長。擦れた朱と黒のコントラストが美しく、使い込むほどに艶が出て、傷さえも味わいになる。
池ノ上さんは約30年前に「根来塗を追い求めたい」と根来塗の権威者であった故・河田貞氏に師事。2000年に根来寺を開創した覚鑁(かくばん)上人の命日である12月12日に根来寺の許を得て宗家に。400年以上生産が途絶えていた根来塗を復興させ、07年に県の指定を受けて県郷土伝統工芸品「根来寺根来塗」として復興登録をした。
9日には同市根来の市民俗資料館内根来塗工房で記者会見を開き、池ノ上さんは「河田先生から根来塗の面白さを教わった。先生にこの喜びを一番に伝えたい」と5年前に亡くなった師への感謝を口にした。
これまでを振り返り「約10年前に病気をしたときが作品を作れずに苦しかった。病気を乗り越えたことで精神的に大きくなり、本当の根来塗を伝えられるようになった」と話し、今後は「魅力ある作品を作るには人間性が重要なので高めていきたい」と抱負を述べた。
池ノ上さんの作品展が大阪市阿倍野区のあべのハルカス近鉄本店で18日から24日まで、和歌山市の近鉄百貨店和歌山店で来年1月2日から8日まで開かれる。