経済、雇用への影響懸念 和歌山製鉄所高炉休止
鉄鋼最大手の日本製鉄は7日、和歌山製鉄所(和歌山県和歌山市)の高炉2基のうち1基を2022年上半期をめどに休止すると発表した。単独で従業員3000人を超え、多くの関連会社もある巨大事業所の縮小に、県、市経済への影響が懸念されている。
厳しい経営環境を受け、生産構造を見直す一環。米中貿易摩擦に端を発する製造業向け鉄鋼需要の減退、価格低迷と、原燃料価格の高止まりの同時発生により、同社は2019年度決算で単独営業損失が1300億円の大幅赤字に陥り、子会社も含めた減損などで4900億円の損失を計上する見通しとなった。
和歌山製鉄所は19年3月末時点の従業員数3045人、粗鋼生産量は18年度実績で432万㌧に達する。休止を決めたのは、510億円を投じて建設され、09年7月に火入れした第1高炉。関連設備の第4・第5コークス炉、第3連続鋳造機の一部なども含め、22年9月までに休止する。
休止発表を受け、仁坂吉伸知事はコメントを発表。利益率の低い普通鋼スラブの生産を停止することになった一方、同製鉄所の出荷先である台湾鋼鉄向けのスラブは同社全体として打ち切るわけではないことから、「なぜ新鋭の和歌山製鉄所の高炉を休止するに至ったのか理解に苦しむ」とし、「雇用や協力企業を中心とした地域経済への影響を心配せざるを得ない」と懸念を表明。影響が最小となるよう努力するとした上で、「今回の発表をこの製鉄所の存亡に関わるようなものと理解をするのは誤りであると思う」との見解を示した。
尾花正啓市長も「日本製鉄に対して見直しを求めるなど、市の経済や雇用に影響を及ぼさないよう早急に対応していく」とコメントしている。