香りが特徴の銘菓「水戸の梅」
前号では、水戸を代表する菓子として知られ、甘酸っぱさと弾力が特徴の「のし梅」と、同じ名称で売られご当地ならではの工夫がされた和歌山県のものとの違いを取り上げた。今週も、梅にちなんだ水戸ならではの菓子「水戸の梅」を紹介したい。
水戸の梅は菓子そのものに付けられた名前。見た目は熟した梅の実のよう。白餡(あん)やこし餡を、もっちりとした食感が特徴の求肥(ぎゅうひ)に包み、それを赤紫蘇で巻いたもの。この赤紫蘇にご当地ならではの工夫がされている。それは、収穫した赤紫蘇を塩水に漬け、さらに3カ月程度かけて梅酢に漬け込む。そして蜜で煮込むという手間暇がかけられているということ。
包み紙を開けるなり梅の香りが漂い、酸味と塩味の効いた赤紫蘇が、白餡やこし餡の甘さと絶妙にマッチする上品な味わい。抹茶との相性が良く、茶菓子として親しまれる菓子。年中を通して梅の香りが楽しめ、梅で知られるご当地ならではの土産品として、市内各地で販売されている。
その歴史は深く、水戸藩9代藩主・徳川斉昭が梅干しを紫蘇で巻いて作らせたとされる菓子を参考に、明治25年、水戸市内の和菓子店が考案。明治33年の常磐線開通に合わせ、県知事に相当する当時の県令が、水戸ならではの観光客向けの土産品の開発を命じたことから、水戸を代表する菓子の一つとして定着したという。1965年に菓子業者で作る団体が商標登録し、加盟する五つの菓子店が製造・販売している。
偕楽園に広がる梅の香りを表現し、年中を通して梅に縁の深い土地であることを全国に発信する菓子。ぜひ一度、ご賞味いただきたい。 (次田尚弘/水戸市)