多くの本との出合いの場に 海南ノビノス②
児童図書館は1978年に誕生。子どもが対象の図書館は全国でも珍しかった。元館長の吉村純三さんと司書の森下景子さんによれば、ことし1月の閉館まで地域の小学生や親子連れがたくさん訪れたという。学校などで見学に訪れ、それから来るようになる子どももいた。
ノビノスが建設されると知った時、吉村さんは子どもだけでなく、学生、一般の人も楽しめる大きな図書施設ができることをうれしく思った。森下さんはこれまで児童図書館に大人向けの本を置いてほしいというリクエストもあり、同じく充実した図書館ができるのではと思ったという。
海南市中心部には大人向けの書籍を置いた図書館がなく、中高生以上の人は下津図書館か和歌山市の県立図書館まで本を借りに行く人が多かった。小さな図書館には小さいからこその良さがあったが、大きな図書館であればより多くの人に本に親しんでもらえるという考えもあった。
児童図書館にあった約2万6000冊の本は、管理用のICタグやラベルを貼り、3月にノビノスへ引っ越した。3月中旬からはノビノスの利用カードの新規発行手続きを受け付けており、県立図書館の利用券を持った年配の人が多く発行に訪れ、3月末までに約200人が手続きしたという。
ノビノスでは、絵本5万冊という日本一の開架冊数を掲げている。これまで児童図書館で絵本や児童書を取り扱ってきた吉村さんは「子どもが本に興味を持つ機会になる。本を選ぶ選択の幅も広がるのでは」、森下さんは「本がたくさんあるのは子どもにとってもうれしいのでは。本との出会いを大切にできるスペースであってほしい」と子どもと本の新しい出会いに願いを込めた。