田辺の画家・真砂幽泉 県立博物館で企画展
江戸時代後期に田辺で活躍した画家・真砂幽泉(まなご・ゆうせん、1770~1835)の活動を紹介する企画展「紀伊田辺の画家 真砂幽泉」が12日まで、和歌山県立博物館(和歌山市吹上)で開かれている。
幽泉は田辺領三栖組(現在の田辺市)の大庄屋の家の長男として生まれ、34歳で家督を継いだが、若い頃から絵を学び、生涯にわたり作画に励んだ人物。その技術が認められ、紀伊藩主に絵を献上するなどし、大庄屋役を免じられた晩年には本格的に画師として活動した。
幽泉の子孫の家には、完成された作品の他、絵の学習過程を伝える下絵、絵手本類などの膨大な資料が残されている。同館は約600点の資料の寄託を受け、2018年から外部の研究者4人と共同で調査を進めており、今回の企画展は2年間の調査の中間報告となる。
これまでの調査では、幽泉が公務の傍ら京都に足を運び、狩野派の流れをくむ鶴澤探泉(つるさわ・たんせん)らに直接手ほどきを受けた他、通信教育のような方法で学んでいたことが判明した。
展示作品のうち、農民の稲作と養蚕の様子を描いた「耕織図屛風(こうしょくずびょうぶ)」は、大坂の画家・大岡春卜(おおおか・しゅんぼく)の作品を原本に、幽泉が写して下絵を描き、作品を完成させる流れが追体験できる。
裏に「探泉筆手本」と記された下絵は、師匠の探泉の手本を幽泉が模写したものと考えられ、寒山拾得(かんざんじっとく)などの人物、花鳥図、山水図などの画題が含まれている。残された書簡から、探泉の手本や幽泉の模写は、船便や飛脚で田辺と京都を往復したことが分かっている。
幽泉が亡くなる2年前の代表作「三聖図」は、縦74・2㌢、横136・4㌢の大画面に、老子、釈迦、孔子の三聖人が迫力ある筆致で描かれ、紀伊藩の儒学者・仁井田好古(にいだ・こうこ)が賛文を記している。
午前9時半から午後5時(入館は4時半)まで。月曜休館。入館料は一般280円、大学生170円、高校生以下と65歳以上、障害者、県内在住の外国人留学生は無料。
問い合わせは同館(℡073・436・8670)。