不屈の精神つづる 田原サヨコ校長の伝記

全国広域通信制の慶風高校(和歌山県紀美野町田)をつくった田原サヨ子校長(73)の半生を描いた伝記『新あきらめたらアカン!』が20日、和歌山新報社から出版される。著者は、これまでにもアクロナイネンの勝本僖一会長の創業秘話や、社会福祉法人つわぶき会の故・岩橋正純前理事長の生涯などを執筆した髙田朋男さん(65)。タイトル通りの精神で、慶風高校を立ち上げた田原校長の力強い姿をつづっている。

田原校長は1969年に和歌山大学を卒業後、高校の教員となる。結婚に伴い退職し、知人の中学生に勉強を教えたことから塾を開校。1989年に田原アークビジネスカレッジを設立。2005年に慶風高校を設立した。

書籍は同校の創立15周年の記念に残るものを作ろうと2017年から制作を始め、髙田さんが田原校長に何度もインタビューを行って書き進められた。伝記では「わんぱく」と呼ばれた幼少期のエピソードや、ターニングポイントになった分数の計算ができない高校生との出会い、開校の認可を求めて県庁に飛び込んだ際の葛藤、そして家族との座談会など、教師、母親、教育者と歩んできた田原校長の軌跡を描いている。同校で受け入れている不登校や学校中退などで将来に迷った生徒の話や、家族の支えになればと先人や作品の名言も取り上げている。表紙デザインは田原校長の娘の能登左知さんが手掛けた。

髙田さんはインタビューを通してキャラクターの濃さが伝わる話がたくさんあったと笑い、「教師、主婦、教育者、そして経営者として歩んできた田原さんは、働く女性の先駆け的存在。生徒を励まし、また自身も壁を乗り越えていく姿も書き応えがあった」と語る。田原校長は「(内容を振り返り)こうして努力してこられたのも皆さんのおかげだと思った。書籍化もちょうど条件が合ったからできたこと。後世に学校をつくった時の思いを継いでいけたら」と話している。

『新あきらめたらアカン!』は245㌻、税別1200円。宮脇書店和歌山店、同ロイネット和歌山店、県内のツタヤWAY書店で取り扱い。

新刊を手に著者の髙田さん㊧と田原校長

新刊を手に著者の髙田さん㊧と田原校長