教育の向上へ 和大付小でオンライン研究会
新型コロナウイルスにより、臨時休校やオンライン授業、夏休みの大幅短縮など、学校現場では大きな影響が続き、教員の研修や授業力向上などの取り組みも変化を余儀なくされた。和歌山大学付属小学校(和歌山県和歌山市吹上、北垣有信校長)は、秋の教育研究発表会を県内初のオンラインで開催。海外を含む約550人が参加し、対面では実施しにくい環境を逆に生かして、教員らが学びを深め合う機会となった。
急激に変化する社会において、協働的に問題解決を図ろうとする子どもの育成を目指し、同校は2018年度から研究主題に「未来に生きて働く資質・能力の育成」を掲げる。3年目の本年度は「探求の質を高める授業づくりの『しかけ』と評価の在り方」を副題とした。
研究発表会が開かれたのは10月31日。同校教員は10本の授業の動画をオンラインで事前に公開し、参加者は動画を見た上で、各授業についてビデオ会議システムで協議した。
従来は発表会当日に研究授業を行っており、研究主任の中山和幸教諭は「これまでは自分が授業をするので手いっぱいだったが、今回は配信に堪える授業映像になっているかどうかチェックし合う中で、教員同士で課題などの共有が進んだ」と振り返る。
参加者は、県内外の教員や和大の教育学部生、他大学の学生、スペインやオーストラリアの日本人学校の教員ら。研究授業ごとに和大の教員らを助言者に協議会を行い、児童に疑問を抱かせ、自ら答えや解説策を探求するよう促す授業の工夫について、積極的な評価、さらなる改善に向けた意見などが寄せられた。
協議会に続いて國學院大学の田村学教授の講演があり、その中で行われた付属小の西川恭矢教諭と久保文人教諭、中山教諭の3人との対談は特に参加者に好評だったという。
江戸幕府8代将軍・徳川吉宗と、吉宗とは対照的な政策をとった尾張藩主・徳川宗春を比較する6年生社会の授業を担当した西川教諭は「歴史上のことも多角的な視点で見て、『今』の自分の生活などと結び付けて学ぶことが大事」と授業の狙いを話し、電気で明かりをつける仕組みを学ぶ3年生理科を担当した久保教諭は「子どもたちがそれまでの認識とのずれに気付いたときに問題を解決する意識が出てきた。自分で問いを設定し、答えを見つけていく力が付いた」と手応えを語った。
中山教諭は、児童が探求するプロセスを大切にする学びの在り方が、教科を超えて生きた成果をもたらすことを強調。田村教授は「学び手(子ども)を中心に教育を考えることが、資質を育んでいくには欠かせない」と述べた。
研究発表会参加者の意見はビデオ会議システムのチャット機能を使ってリアルタイムに表示された。会場に集まる方法では発言はごく一部の人に限られてきたが、従来を大きく上回る数の発言がなされ、データとして記録され、オンラインならではの利点が浮かび上がった。
中井章博副校長は「準備は非常に大変だったが、ICT(情報通信技術)を使って双方向に意見交換する可能性が開けた」と話し、今後はアナログとデジタルを組み合わせた教育研究と発表の在り方を模索したいとしている。