地元の漆で根来塗を 池ノ上さん県内初鎌入れ

根来寺根来塗宗家の池ノ上辰山(しんざん)さん(61)はこのほど、根来山げんきの森(和歌山県岩出市根来)で漆の植林地から漆を採取する、漆掻(か)きを県内で初めて行った。

池ノ上さんは、400年以上生産が途絶えていた根来塗を復興。2019年に文化庁長官表彰を受けた他、2006年には桂宮宜仁親王殿下から優秀漆工技術者に選ばれた。明治神宮で行われた表彰式で、漆の苗木50本が贈られ、翌年、池ノ上さんが中心となる「根来塗曙山会」が、県内で初めて漆の木を植樹した。

同会は、池ノ上さんをはじめ、同年に県の指定を受け、県郷土伝統工芸品として復興登録された「根来寺根来塗」の技法を学ぶ、岩出市教育委員会主催の根来塗講座の生徒ら約60人からなる。

植樹当初は年5回、現在は年2回の草刈りなど、手入れをしながら14年間大切に育み、この日初めて漆の木を刃物で傷を付ける、初鎌入れを行った。

NPO法人根来山げんきの森倶楽部の土生川(はぶかわ)幹夫理事長や、根来塗を学ぶ門下生ら約30人が見守る中、根来寺の住職が、根来塗の発展と同会員らの精進を願い、祈祷(きとう)した。

漆掻きは、大きな皮剥鎌(かわはぎがま)で、表面の木の皮を薄く削るところから始まり、漆がんなで表面をえぐったところにカンナの反対側の刃で傷を付けた。本来であれば樹液が出たところを掻き、ヘラで漆を取るが、今回は漆の木に傷を付け、漆が出るように木に覚えさせる「初鎌入れ」を行った。

池ノ上さんは「14年間大切に育ててきたので、この日を迎えられてうれしい。和歌山の漆だけで、1個のお椀だけでもいいから作りたいと思っているので、多くの人に注目していただきたい」と意気込んだ。

4回目の漆掻きくらいから漆が採取されるとの予想で、5~9月に漆を集め、その漆で根来寺根来塗の器を作るという。

門下生らに漆掻きを見せる池ノ上さん㊨

門下生らに漆掻きを見せる池ノ上さん㊨