規格外のミカンがアプリでヒット 古川さん
和歌山県海南市下津町で「蔵出しみかん」などを栽培する「農園大」代表の古川渉大さん(32)が、マーケットアプリ「Let(レット)」の2021年2月度「月間ベスト出品者」の「ヒット賞」に選ばれた。食品ロスを減らそうと出品した規格外品が口コミで高評価を獲得し、全国のユーザーからの注文が相次ぎ、一躍ヒット商品となった。
古川さんは有田市出身。30歳まで大阪府内で電気工事関係の仕事をしていたが、農家に転業しようと2020年1月に和歌山市内の実家に戻った。友人で、包装資材を販売するホンシュー包装㈱(同町曽根田)の大谷龍児社長に誘われ、大谷社長が運営するミカン農園で初めて農業に挑戦。さらに、大谷社長から新規就農の話を紹介され、大谷社長の知り合いの農家から農園を貸り、10カ所でミカン栽培を始めた。
ミカン栽培は通常3月ごろにスタートするが、古川さんの農園には一部、6月から始めたものもあり、世話が十分に行き渡らず、規格外のミカンが出た。
通常の出荷は難しいため、古川さんは食品ロスを避けようと販売先を探していたところ、訳あり品の販売や食品ロス削減を掲げる㈱レット(東京都)のアプリ「レット」を見つけ、テスト販売することにした。
規格外品は、正規品に比べて見劣りし、サイズも不ぞろいだが、味に変わりはない。出品開始から1カ月余りで「小粒だがすごく甘くておいしい」「おいしく食べられて食品ロス解消に貢献できてうれしい」などと1000件を超える口コミで評価され、アプリ利用事業者を対象とした今回の受賞につながった。
伝統あるミカン産地の下津町でも、高齢化による農家の減少に伴い、ミカン園が耕作放棄され、荒れ果てていく状況を大谷さんは心配してきた。古川さんの受賞を知り、「農家の仕事を全くしたことがなくても、1年間で結果を出したのはとても素晴らしい」とたたえ、今後に期待している。
有田市で「そらさら農園」を経営し、3月に農業団体「Cruise Arida(クルーズありだ)」を立ち上げた橋爪裕介さんは「新規就農希望者が収穫時期だけ手伝いに来るのではなく、一年をかけてミカン作りに取り組むことが必要。ミカン作りを学んで希望する農家へ派遣し、働く場所を増やすことで、若者が集まる環境をつくりたい」との思いがあり、就農1年目での古川さんの快挙を喜ぶ。
古川さんは「最初は手伝いのつもりで始めたが、ミカン作りの楽しさが分かってきた。レットのようなツールがあることにとても感謝している。今後も経験を生かし、食品ロスを極力なくしていきたい」と話している。