紀州の名刀が集結 24日~県立博物館特別展
県立博物館(和歌山市吹上)の特別展「きのくに 刀剣ワールド」が24日から6月6日まで開かれる。紀州の刀工による洗練された作品や寺社に奉納された刀剣など、重要文化財を含む名刀の数々が並び、一本ごとに異なる個性的な美を鑑賞できる。同館で刀剣をメインテーマにした特別展は39年ぶりの開催となる。
紀州では南北朝時代以降、局地的な戦闘がしばしば起こったため、武器の需要が高まり、刀剣の制作が行われるようになったと考えられている。時代順に江戸時代にかけて、入鹿(いるか)鍛冶(かじ)、粉河鍛冶、文珠(もんじゅ)鍛冶、石堂(いしどう)鍛冶の四つの主要な刀工の系譜がみられる。
室町時代から江戸時代にかけての紀州の刀剣は、大和国(やまとのくに=奈良県)の影響を受けることが多く、直刃(すぐは)と呼ばれる直線的な刃文の堅実な作品が中心となっており、刃文が派手なものはあまり見られない。
今回の展示点数は、重要文化財6件6点、県指定文化財2件2点を含む48件130点。
重要文化財は寺社に奉納された名品2点で、紀州東照宮(和歌山市)蔵の「太刀 守家作 糸巻太刀拵(ごしらえ)」と、滝尻王子宮十郷神社(田辺市中辺路町)蔵の「黒漆小太刀 有次作」。
紀州の刀工による見どころの展示品の一つは「短刀 銘 入鹿實次(さねつぐ)」(個人蔵)。紀伊国牟婁郡入鹿荘(現在の三重県熊野市紀和町)で制作された、大和から移住した刀工の第2世代(室町前期)の作品となる。加賀藩主・前田家旧蔵と伝えられている。
県指定文化財の「刀 銘 於南紀(なんきにおいて)重国(しげくに)造之(これをつくる)」(同館蔵)は、初代藩主・徳川頼宣の時代から11代にわたって紀伊徳川家に仕えた刀工・重国の初代による優美な作品。
「脇指(わきざし) 銘 大和守安定(やまとのかみやすさだ)」(同館蔵)は、一族の出身地が白浜町の富田浦(とんだうら)付近だった刀工・大和守安定が手掛けた。その作品は良く切れる「業物(わざもの)」として有名で、江戸の武士に人気があった。
武士が大切にした刀剣を飾る「刀装具(とうそうぐ)」も展示されている。和歌山城下にも職人が住み、柄(つか)の表裏に付ける金具「目貫(めぬき)」をはじめ、武士の趣向に合わせて繊細な作品を作っていた。
関連行事として、講演会「紀州の刀剣」を5月9日、23日の午後1時半~2時半、同館2階学習室で開く。9日は「古刀編」、23日は「新刀・新々刀編」で、講師は高屋健治さん(日本美術刀剣保存協会県支部副支部長)。定員は各回先着20人。4月24日午前9時半から電話(℡073・436・8670)で申し込みを受け付ける。
展示は午前9時半から午後5時(入館は4時半)まで。月曜休館(ただし5月3日は開館、6日は休館)。入館料は一般520円、大学生310円、高校生以下と65歳以上、障害者、県内在学の外国人留学生は無料。