薬剤師も接種研修 ワクチン担い手不足に備え
薬剤師が新型コロナウイルスワクチンの打ち手を担う場合に備えて、和歌山県薬剤師会は27日、県立医科大学薬学部伏虎キャンパス(和歌山市七番丁)でプレ準備研修会を開き、県内全域の薬剤師会の会員薬局に勤務する薬剤師ら約75人が参加した。先月の厚労省による検討会で薬剤師による接種は見送られたが、今後、担い手として要請される可能性も考え、ワクチンの効果や副反応などの知識を座学で深め、筋肉注射のシミュレーションなどの実技研修も行った。
同会の稲葉眞也会長は研修会で、「注射の経験や知識のない薬剤師にコロナワクチン接種が本当にできるのか分からない」と話した上で、「今回出番がなくても今後何かのパンデミックが起こったときに経験を生かせるよう、一度シミュレーションをしてみようと思った」と趣旨や経緯を伝えた。
同大薬学部臨床担当の須野学教授が「コロナワクチン概論」をテーマに講演し、接種後は針を刺されることによる心理的ショックによる血管迷走神経反射や、体内に異物が入ったことによる過度のアレルギー反応を指す「アナフィラキシー」などに注意する必要があると説明。一方、接種後の発熱や疼痛(とうつう)は一般的に72時間以内といわれ、一過性のものにすぎないため、ワクチンによって免疫誘導されている症状であることを理解してもらえるよう「薬剤師として諭してあげることも大切」などと話した。
同大医学部の岩倉浩講師は、「ワクチンを希釈せず原液のまま注射してしまった」「使用済みの注射器を誤って刺してしまった」など、報告されているトラブルを例に挙げながら、コロナワクチンを安全に接種するための注意とポイントを紹介した。
実技研修では、6班に分かれた参加者らが医療用ガウンに身を包みグローブを着けて、ワクチンの希釈と充填(じゅうてん)を行った。使用済みのファイザーワクチンの原液0・45㍉㍑があると想定し、生理食塩液1・8㍉㍑で薄め、ワクチン1回分の0・3㍉㍑を注射器に充填する。充填作業は、空気圧も考慮する必要があり難しく、既に集団接種会場などで充填作業を行っている薬剤師もいたが、普段注射器を使わない薬剤師の中には苦戦している人の姿も見られた。
充填後は、その注射器を使い、筋肉注射シミュレーターを腕に巻いた稲葉会長らに注射を打つといった実技研修が行われ、岩倉医師による指導のもと練習を重ねた。同市の薬局に勤務し、前日にもコロナワクチンの充填作業を行ったという薬剤師の太田栄美さん(54)は「筋肉注射は思っていたところと刺す位置が違って難しかった」とし、「いつ必要とされるか分からないので、準備はしておこうと思う。医師や看護師の負担を減らす意味でも、既に行っているワクチンの希釈や充填は完璧にしておきたい」と話した。