わいせつ教員根絶を議員立法 子どもの人権のため3カ月で成立
5月28日の参議院本会議で、教員がわいせつ行為などを理由に懲戒免職になっても3年で免許が再取得できる現行制度の課題に対応する「教育職員による児童生徒性暴力防止法」(議員立法)が、全会一致で可決・成立しました。私は、これまでも委員会で質問し、今回、自民・公明両党の「与党わいせつ教員根絶立法検討ワーキングチーム(WT)」の共同座長として取り組みました。
この問題の深刻さを知ったのは、特別支援学級に通う小学校4年生の娘をもつ母親の話を聞いたことがきっかけでした。母親が娘さんと話していると、娘がニコニコしながら、「今日もね、先生にお洋服を脱げと言われたの。洋服を脱いだら、先生が優しく見てくれたの」と話し始めました。それを聞いた母親は寝込むほどのショックを受けました。
信頼している教員からの性暴力は、子どもたちに回復しがたい一生涯の傷を負わせてしまいます。特に、低学年や障がいのある児童生徒へのわいせつ行為などは、子どもが被害を理解できなかったり、訴えることが難しかったりする場合があり、極めて卑劣な行為なのです。
ところが現行制度では、教員がわいせつ行為などで懲戒免職になっても、3年たてば免許が再取得できてしまいます。文科省は、免許を失った加害教員に対して無期限に免許を与えないとする教育職員免許法の改正を検討しましたが、憲法で定める「職業選択の自由」に抵触する可能性があるとして、昨年末に断念しました。
そこで「今も被害に苦しむ子どもを思えば、議員立法で前に進めていくしかない」。私は、そう決心し、自民党にも働き掛けて与党WTを立ち上げました。毎週月曜日、WTで、被害者や教育関係者、法学などの有識者からのヒアリングを重ね、いずれの関係者とも「加害教員を二度と教壇に立たせてはいけない」との考えで一致。毎週火曜日には役員会を開催し、これまで20回以上の会合を経て、約3カ月で法案を取りまとめました。
新法は、幼稚園に通う幼児から18歳未満の学校に在籍する児童生徒を対象に、教職員による「性暴力等の禁止」を明記、性交やわいせつ行為のほか、衣服の上からでも体に触れたり、下着を撮影したりすることも性暴力と例示しています。再免許の授与については、改善更生の状況などを踏まえ「適当であると認められる場合に限り、再び免許状を授与することができる」とし、これにより、免許を授与する都道府県教育委員会に裁量が与えられ、不交付とすることも可能になります。医師法でも再免許の授与について裁量が認められており、職業選択の自由には抵触しません。
免許取り上げの処分を受けた教員の氏名や処分理由などを登録するデータベースを国が整備することも規定しています。在籍していた教育委員会以外での免許の再取得を申請したとしても、過去の処分履歴などを情報共有できる仕組みにしました。
新法は一部を除いて来年の6月までに施行されます。施行後、再免許の授与を巡っては、都道府県の各教育委員会に第三者委員会である「免許状再授与審査会」を設けて意見を聴くことになります。審査会のメンバーや判断基準などでばらつきが出ないよう、文科省には丁寧な制度設計をしっかりと求めていきます。
これからも、子どもたちの健やかな成長と人権を守るため、引き続き対策に取り組んでまいります。