「フルーツビール」の魅力と作り方

前号では、和歌山県が全国1位の生産量を誇り、150年以上の歴史を持つ「八朔」の歴史と生産量の変化を取り上げた。酸味が強くほろ苦さがあることから、近年、生産量を伸ばしてきた他の春柑橘(かんきつ)の台頭を許し、ピーク時の6分の1程度まで減っている。発祥の地である広島県などでは、歴史ある八朔を後世に残そうと、特徴を生かした加工品の開発に乗り出している。今週は、八朔を使ったフルーツビールと、その作り方を紹介したい。
フルーツビールとは、発酵後のビールにフルーツの果汁を加え貯蔵タンクで熟成させたもので、アルコール度数が低めに設定された発泡酒。柑橘に加え、桃、マスカット、イチゴなど種類はさまざま。八朔は特徴である爽やかな香りとほろ苦さがビールとマッチしていることから、フルーツビールの原料としてふさわしいという。
フルーツビールの場合、貯蔵タンクで熟成するという工程があるが、市販のビールを使い家庭で作ることも可能。ビールの中でも、上面発酵酵母を使った「エールビール」と呼ばれるものがお薦め。エールビールのフルーティーな香りが八朔の爽やかさでさらに引き立ち、ほろ苦さが後味を良くしてくれる。果汁を搾って入れるのも良し、輪切りに切ったものを10分程度浮かべ、サワーのようにするのも良し。ビールと果汁の比率は味見をしながら好みに合わせて調整してほしい。
広島県では特産のレモンと八朔の果汁を使ったサワーを開発し、全国のコンビニチェーンで販売されるなど、八朔を使ったお酒を楽しむ機会が増えてきた。まもなく夏の到来。冷えたビールやサワーがおいしい季節。柑橘を使った爽やかなお酒を探してみては。
(次田尚弘/和歌山市)