和歌山大空襲の証言記録に 高橋さんが講演
和歌山市中心部が焼け野原となり、1101人以上の命が失われた和歌山大空襲から76年となる9日、同市の鷺森別院で全戦没者追悼供養と講演会があり、集まった約70人が戦争の悲惨さや平和の尊さに思いをはせ、どう語り継いでいくかを考えた。
講演会では、空襲体験者から聞き取り調査を行っている元市立博物館学芸員の高橋克伸さんが、証言者の高齢化が進む今、その体験談を音声で記録し、後世に伝えていくことが大切だと語った。
同館では、戦後70年を迎えた2015年から、1945年1月を起点に始まった同市空襲の体験談を音声で記録する活動を行っている。これまでに134人が協力し、体験者でしか語ることのできない思いや悲惨さを声で継承している。
米軍などの資料によると、9日11時58分から10日未明にかけて起きた大空襲では、市街全域に焼夷弾約800㌧が投下され、1101人以上の死者を出した。
高橋さんは、汀丁で発生した火災旋風に巻き込まれ、その熱さに転がりながら念仏を唱えた女性の証言や、爆風で飛ばされ倒れた女性の目に映った和歌山城が燃えていく光景、焼夷弾が直撃し亡くなった孫を見て「代わってやりたい」と泣く老女の姿など、体験者が語った当時の凄惨(せいさん)な状況を紹介。
高橋さんは「あの日まで、ここでは生活している人たちがいた。それがたった一夜ですべてが変わってしまった」とし、体験談を語ってくれた人の多くは、「あの体験を今の人にさせたくない」と強い思いで活動に協力してくれていると話した。
講演を聞いた女性は「焼夷弾の話など衝撃的だった。次の世代に伝えることの難しさを感じた」と話していた。