戦争の恐ろしさ語り継ぐ 安楽川小で紙芝居

平和学習の一環として和歌山県の紀の川市立安楽川小学校で、赤い夕陽グループによる戦争の実体験を描いた紙芝居の読み語りが行われ、5年生の児童ら約50人が戦争の悲惨さと、平和のありがたさについて学んだ。

『赤い夕陽に』と題された紙芝居は、同グループの一人、同市野田原の上村正次さん(92)の実体験を描いた作品。上村さんは15歳の時、「満州開拓青少年義勇軍」に志願して旧満州に渡った。冬にはマイナス30度を超える過酷な環境で終戦を迎えた上村さんが、食べ物も帰る場所もなく、死と直面しながら生き抜いた実話。上村さんの体験記をもとに、橋本市出身の街頭紙芝居師、鶴谷(つるたに)光子さんが絵を描き、紙芝居に仕上げた。

紙芝居は、朗読サークル「さわらび」で20年以上活動を続け、赤い夕陽グループの代表を務める木村百合子さんが朗読。ストーリーに合わせて随所で山本広一さんがトランペットを吹くなど、当時の状況や心境をリアルに伝えた。物語の最後には「戦争ほど恐ろしいものはありません。平和ほどありがたいものはありません。かけがえのない平和をずっと大切に守り続けてください」とのメッセージを送り、子どもたちにも分かりやすい紙芝居で戦争の恐ろしさと平和の尊さを伝えた。

同グループの一人で、終戦時は小学4年生だったという津田功さん(85)は、イナゴを捕って飢えをしのいだ当時を振り返り、「好きなものを食べられる、こんないい時代はありません」と話した。木村さんは「一人ひとりに家族がいてドラマがある。無差別に殺し合う戦争はどんなことがあってもしてはいけない」と伝え、上村さんは「これから子どもたちが大きくなった時に戦争のない社会であってほしい」と願っていた。

紙芝居を鑑賞した同校の中川乃々圭さん(10)は「普通に暮らせているのは、戦ってきてくれた人たちのおかげ」と感謝。仲岡羚愛(れあ)さん(10)は「人と人との殺し合いの戦争は二度とやってはいけない」と話し、原寿宏校長は「人権侵害の戦争は、いじめにもつながる。自分も周りも大切にしてほしい」と呼び掛けていた。

 

平和を願い戦中の状況を紙芝居で伝えた