お城の桜治療開始 県造園建設協が再生へ

和歌山県造園建設業協会(吉本忠生会長)が創立50周年記念事業として取り組む、和歌山城公園(和歌山市)の桜再生事業が22日、始まった。同協会の職人ら約30人が参加し、弱った木々の治療を目的とする剪定(せんてい)、倒木や枝が落ちる危険がある木の除去などを進めた。作業は23日も続けられ、木々の状態を確認しながら、来年夏にかけて樹勢回復を図っていく。

県内屈指の花見の名所として知られる同公園には、昭和40~50年代に植えられたソメイヨシノを中心に約600本の桜がある。樹勢が衰え、幹の内部が腐り、菌類の繁殖がみられる木もあることから、同協会が市と協定を結び、今回の桜再生事業が決まった。

樹勢回復を目指すのは、公園内北東の一の橋を渡った大手門から南東の岡口門にかけて並木となっている約240本。石垣などに沿って特に桜が集中し、花見スポットとして人気が高いが、周囲の土は踏み固められ、木々が水を吸い上げる力や根の成長を妨げている。

同公園は国指定史跡であり、土壌を掘って改良することができないため、木が花にエネルギーを使い過ぎず、弱った部分に栄養が行き渡るよう、余分な枝を落とし、葉に十分な光が当たることなどに配慮した剪定を行うことにした。

初日の22日午前9時、作業に当たる約30人が公園内の表坂前に集合。作業時の安全対策などを確認し、吉本会長は、けががないよう注意して作業に当たるよう呼び掛けた。

参加者は7班に分かれ、クレーンや大型の脚立などを使いながら、小さな枝は剪定ばさみやのこぎりで、大きな枝や幹はチェーンソーで切り、切断面に殺菌効果のある保護剤を塗るなどの作業を手際よく進めた。日本樹木医会県支部から山本聰洋(としひろ)支部長ら4人も参加し、作業のアドバイスに当たった。

吉本会長は「傷んでいる木が多く、ほとんど枯れて、安全のために致し方なく切る木もあるが、なるべく樹勢を回復して長く桜を楽しめるようにしたい」と事業への意気込みを語り、「公園の木にしろ街路樹にしろ、ずっと何もせずにそこにあるのは不可能に近い。公共の緑の大切さを再認識していただければありがたい」と話していた。

剪定した枝に保護剤を塗る作業員

剪定した枝に保護剤を塗る作業員