紀の川市産「グレープフルーツ」
前号では、国内産としては貴重な存在で、香りを楽しむ柑橘(かんきつ)「ライム」を取り上げた。海外からの輸入品が一般的だが、近年、県内で生産される柑橘が他にもある。今週は「グレープフルーツ」を紹介したい。
2018年の農水省統計によると、国内産の全国の生産量は23・3㌧。ほとんどが静岡県で栽培されており、統計値に和歌山県の表記は現れない。筆者が産直市場で偶然見つけたのが、紀の川市で収穫されたもの。ごくわずかであるが、県内でも生産されている。
グレープフルーツの歴史をたどると、発見されたのは18世紀ごろ。西インド諸島のバルバドスで発見されたとされる。海外のフルーツという印象があるが、実は、春柑橘のひとつ「ブンタン」と「オレンジ」が自然交配したもの。1823年にアメリカのフロリダに伝わり栽培が盛んに。
大正期に苗が日本に輸入されるも寒さが故に普及しなかった。1971年の輸入自由化により、年間を通して市場に出回る一般的な柑橘となった。ちなみに、名前の由来は、まるでブドウのように木にたくさんの実がなることにあるという。
国内で流通するグレープフルーツには品種が二つあり、一つは皮が黄色く白い果肉が特徴の「ホワイト・マーシュ」というもの。果汁が多く、爽やかな甘酸っぱさが特徴。もう一つは「ルビー」「ピンク・マーシュ」と呼ばれる、赤い色をした果肉が特徴のもの。酸味が強くなく味がまろやかであることが特徴。筆者が入手した県内産のものは、ホワイト・マーシュ。輪切りにすると瑞々しい果肉に少し多めの種があり、輸入品と遜色ない出来栄え。
収穫からすぐに食べられる県内産は特別な存在。見つけることができれば、ぜひ食べてみてほしい。
(次田尚弘/和歌山市)