即時停戦の訴えと演奏 東京藝大の澤学長

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、和歌山市出身のバイオリニストで東京藝術大学学長の澤和樹さんが、即時停戦を訴える学長メッセージを、自ら演奏したウクライナゆかりの作曲家の作品とともに発表し、共感を広げている。戦禍に直面するウクライナの人々の苦しみとともに、経済制裁、優れたアーティストやアスリートらが国際舞台から締め出されるなどロシアの人々が強いられている理不尽な現状にも言及し、「愚かな戦争が、一刻も早く終結することを願います」とつづっている。

4日に公表したメッセージでは、ウクライナについて、作曲家のセルゲイ・プロコフィエフや20世紀最高のバイオリニストとたたえられるダヴィッド・オイストラフ、東京藝大音楽学部の前身である東京音楽学校で1931年から13年間にわたり指導に当たったレオ・シロタらを輩出した地であることを紹介。ロシア軍の侵攻を「許しがたい暴挙であり、決して容認できるものではありません」と非難した上で、「ごく少数の一部の指導者たちの過った判断によって突入した侵略戦争」だとし、戦争を望んでいない多くのロシア人にも思いを寄せている。

メッセージの意図について澤学長は、現在の状況では「加害者ロシア、被害者ウクライナ」の構図を描いてしまうが、ウクライナの人々の苦悩はもちろんとして、「多くのロシア人たちは戦争を望まず、彼らは被害者でもある。即時停戦を訴えるべきと考えた」と話している。

演奏曲は、ウクライナの首都キエフ近郊で生まれたポーランドの作曲家カロル・シマノフスキの「バイオリンとピアノのためのソナタ」より第2楽章。ピアノ演奏は日本在住のポーランド人ピアニスト、イグナツ・リシェツキさんで、隣国ウクライナの状況を憂慮し、平和への祈りを感じさせるこの曲をメッセージに添える澤学長の考えに賛同し、今回の発表に至った。

メッセージ(日本語、英語)と演奏は東京藝大のホームページ、ユー・チューブ公式チャンネルに掲載している。

澤和樹学長(撮影:新津保建秀氏)

澤和樹学長(撮影:新津保建秀氏)