シェパード相棒に 県警嘱託犬指導手の神浪さん
和歌山県警本部主催の「嘱託警察犬競技会」がこのほど、交通センター(和歌山市西)で開かれ、28頭が参加。指導手と共に日頃の訓練の成果を発揮した。ことし1月にデビューした神浪月乃さん(23)と相棒のアナーキー号(シェパード、雌6歳)は犯人や行方不明者の足取りをにおいでたどる「足跡追及の部」に初出場し、5位入賞を果たした。神浪さんは「今回の経験を生かし、今後も日々こつこつ練習を重ねていきたい」といつ来るか分からない出動要請に備え、意気込みを新たにした。
神浪さんは同市出身で、現在は紀ノ川警察犬・愛犬訓練所(同市岩橋)で訓練士として働きながら、アナーキー号の訓練を続けている。
高校生の頃、友人の家で犬のかわいらしさを知り、自身も小型犬を迎え入れた。しかし、かみ癖に悩まされ、インターネットでしつけ方法などを調べた際に訓練士のことを知った。「それなら自分がトレーナーになってしつけよう」と大阪の専門学校に入学。
2年目には訓練士のコースに進み、そこで1人1頭のペアを組んだのが、アナーキー号だった。「アナーキーフォンオーシャンキャナル」というのが血統書の名前で、普段は「杏(きょう)」と呼ぶ。指導手の仕事を知ったのもこの頃で、「杏の良さを引き出したい」と引き取りを決め、嘱託警察犬を目指して、仕事の傍ら訓練を続けてきた。
昨年11月、県警の嘱託警察犬の資格審査会に初めて挑戦し、足跡追及の部門で合格。今回の競技会では、普段訓練している草地とは違い、地面との摩擦が少なく難易度が高いアスファルトのコースということもあり、「大丈夫かなと心配だった」と振り返る。
コース上には、落とし物に見立てた物品が3カ所に置かれており、スタート時は来たことのない場所に緊張した様子で迷っていたアナーキー号だったが、一つ目の落とし物を見つけた後は要領をつかんだのか持ち直し、練習の成果を披露した。「きっちり完走してくれたらいいなと思っていたので、入賞は予想外で驚いた」と話し、「たくさん褒めました」と笑顔。
「においのかぎ方やコースの曲がり方一つにしても訓練の奥深さを感じていて、まだまだ追求していきたい」と話し、「審査会の時もスタートで戸惑ってしまい、今回もその課題を克服できていなかったので、次回は改善し、また入賞できれば」と意気込む。
「のんびりした性格の杏とせっかちな自分は対照的だからこそいい刺激になっているのかな。どちらも未熟なのでお互い補い合って一緒に成長していきたい。積極的に貢献していければ」
県警鑑識課によると現在、県内各地の30頭に嘱託警察犬を委託。15人の指導手がいるが、全国的に高齢化が進んでいる。県内でも20代は神浪さんのみで、30代から70代まで。後継者育成が課題で、同課の村上一徳次席は「人命救助などやりがいのあることなので、もっと若い人に興味を持ってもらえれば」と願い、神浪さんには「経験を積み、いろんな現場で活躍していただきたい」と期待を寄せている。