今や希少品種に「はなよめ」

前号では、桃のシーズンのトップバッターとして親しまれる極早生品種「竜門早生」を取り上げた。今週は、時をほぼ同じくして登場する「はなよめ」を紹介したい。
はなよめは、山梨県で発見された「日川白鳳」の枝替わりで、平成7年に品種登録された比較的新しい品種。早生の露地物は6月から出荷されることから「6月の花嫁(ジューンブライド)」にちなんで、また、果実の色づきが頬を染める花嫁のように見えることから、その名が付けられたという。縁起の良い名前であることから、贈答品として人気があり、結婚の内祝いや出産祝い、父の日のプレゼントに選ばれるなど、晴れの場に活躍する桃である。
果実全体が赤く色づき、香りが良いのが特徴。果重は250㌘程度。糖度は15%程度と高く、酸味が少ない。果実はやや硬めでナイフを入れると容易に半分に切ることができる。食してみると、この時期には珍しい、瑞々しさと甘さがあり、ジューシーで上品な味わい。繊維が少ないことから、とろけるような食感がある。
2018年の農水省統計によると、全国のはなよめの栽培面積は82・7㌶。栽培面積の約半分が山梨県(40・4㌶)で、第2位が熊本県(11㌶)、第3位が和歌山県(8・3㌶)と、和歌山県内でも盛んに栽培されている。
しかし、はなよめは果実が小ぶりであることから、市場で評価されにくく、他の品種に押され生産量が減少傾向。今や希少品種となっている。
7月中旬頃まで楽しめるはなよめ。甘さを求める方はぜひ食べてみてほしい。(次田尚弘/和歌山市)