親品種として親しまれる「白桃」
前号では、果汁が豊富で上品な甘みが特徴の「清水白桃」を取り上げた。今週は、清水白桃の元となった品種「白桃(はくとう)」を紹介したい。
白桃は、明治34年(1901年)に岡山県で発見された偶発実生。中国の「上海水蜜桃(すいみつとう)」から生まれたものといわれるが、元となった品種は定かではない。清水白桃をはじめ、白鳳、日川白鳳、川中島白桃、黄金桃などは、白桃を元に派生した品種であることから「本白桃」や「純白桃」という呼び名もある。
白桃と対比する存在として「黄桃(おうとう)」と呼ばれる品種があるが、白桃は果汁が豊富でジューシーな味わいが楽しめる白肉種で、黄桃は缶詰などに使用されるやや固く実が締まっている黄肉種。私たちが市場で目にする桃は、白桃を由来とする白肉種が多い。
白桃はその名のとおり、果皮が乳白色をしているのが特徴。果実に袋掛けをする「有袋栽培」により成熟させ、直接日光を当てないことから赤くなることなく収穫を迎えることが多い。
果実の重さは250㌘~300㌘程度。食してみると、白い果肉に果汁が多く含まれ、口当たりはなめらか。甘味のなかに少し渋みが感じられるが、品のある味わいが楽しめる。市場に出回る時期は8月上旬から中旬頃と、桃の中では遅めに旬を迎える。
農水省統計によると全国の栽培面積は30㌶程度と広くなく、産地の第1位は京都府(12・2㌶)、第2位は岡山県(5㌶)、第3位長野県(3㌶)となっており、和歌山県は上位10位以内には現れない。
さまざまな桃の親となる品種であるが、意外と生産量が少ない白桃。和歌山県では珍しい品種であるので、見つけたらぜひ食べてみてほしい。(次田尚弘/和歌山市)