冠動脈のレーザー治療 医大が県内初導入
和歌山県立医科大学は、心臓に酸素や栄養を送る冠動脈で発生した動脈硬化にレーザーを照射し、詰まりを解消する治療法を県内で初めて導入した。カテーテルを使用するため患者への負担が小さく、従来は外科手術が必要だった症例などにも有効で、治療の幅を広げるものとして期待されている。
医学部内科学第4講座の田中篤教授、塩野泰紹講師、尾﨑雄一助教、高畑昌弘助教のチームが記者会見で発表した。
冠動脈で動脈硬化が起こると、狭心症や心筋梗塞のリスクがある。従来のカテーテル治療では、脂質や血栓などで狭くなった箇所をバルーン(風船)で拡張し、広げた血管を補強する「ステント」と呼ばれる器具を留置するなどの方法が行われてきたが、石灰化した硬い動脈硬化では拡張が難しく、ステント留置箇所が再度狭くなる症例への対応が困難などの課題があった。
新たな治療法では、狭まった冠動脈に直径0・9~2㍉のカテーテルを挿入し、先端から特殊な紫外線「エキシマレーザー」を病変組織に照射する。エキシマレーザーには分子結合を切断、分解する機能があり、切断に伴い発生する音波エネルギーは硬化した組織に亀裂を生じさせ、さらに音波によって発生する気泡がマイクロジェットとなって組織を切削するという3段階の作用により、病変組織を蒸散させ、詰まりを取り除く。
従来なら、人工血管や静脈を用いたバイパス手術などが必要だった患者にも対応でき、県立医大では、8~9月に3人の患者の治療に成功している。
田中教授は「難しい病変にカテーテルで適応でき、非常に強力なツールになる。患者さんが楽になることが最大のメリットで、体への負担、経済的な負担も小さく、入院期間も短くなる。これまでは県内で対応できなかった患者さんを治療していきたい」と話している。