ギネス世界記録を持つ「まさひめ」

前号では、果実が赤と白のコントラストで美しく、和歌山県内でもわずかに栽培されている「かぐや」を取り上げた。今週は、かぐやと同じく「あかつき」から作られた「まさひめ」を紹介したい。
まさひめは「中津白桃」と「布目早生」からできた「21-18」という桃と、あかつきを交配させて得られた品種。1973年に実生苗の養成が始まり、1989年に新品種候補として認定。まさひめと命名され、1993年に品種登録が完了している。
果実は円形から楕円形をしており重さは約220㌘と小ぶり。果肉は乳白色をしており、日が当たる面がやや赤く着色する。肉質は溶質で締まりがあることから日持ちが良く贈答品として利用されることが多い。食してみると甘味が強く酸味は少なめ。糖度は約13~14度とされる。
栽培地の一つ、大阪府岸和田市の包近(かねちか)地区で2015年に収穫されたまさひめは、平均糖度22・2度を記録。これが、糖度(ブリックス値)が最も高い桃としてギネス世界記録に登録されており、世界で最も甘い桃となっている。甘い桃を栽培するために土壌改善を行い、開花の時期に下向きの花だけを残す摘蕾(てきらい)という作業を行い、収穫時には一枝に一つだけ実を残すという徹底した栽培手法が行われているという。
農水省統計によると、生産地の第1位は新潟県(12・8㌶)、第2位は大阪府(1・4㌶)となっており、第3位以降の記載はない。全国的に見ても希少な品種。筆者は和歌山県内の産直市場で購入。わずかながら和歌山県内でも栽培されている。
栽培方法にこだわりを持てばギネス世界記録に登録されるほどの甘さを引き立てる要素を持ったまさひめ。甘さを求める方は、来シーズンにぜひ見つけて食べてみてほしい。
(次田尚弘/和歌山市)