伝統の和歌祭を次代へ 実行委が小学校で授業
和歌祭を次代の子どもたちへ――。ことし創始400年の節目を迎えた紀州東照宮(和歌山市和歌浦西)の大祭「和歌祭」。伝統ある祭りを絶やさず継承していこうと、運営する和歌祭実行委員会は、子どもたちに向けたワークショップや出前講座を行っている。同実行委員会の保井元吾顧問(57)は「長い間続いてきた全国でも類のない風流(ふりゅう)の大祭で、みんなの誇り。大切に受け継いでいきたい」と若い力に期待する。
和歌祭は、徳川家康の十男で紀州徳川家初代頼宣が1621年、紀州東照宮を創建し、翌22年4月17日に春祭として行われたのが始まり。
祭りの見どころは、108段の急峻な階段を男衆が神輿を担いで駆け下る「神輿(みこし)おろし」と、江戸期の行商人や町奉行などに扮(ふん)した参加者が一帯を練り歩く「渡御(とぎょ)行列」。一方で、1000人ほどが参加する祭りを続けるには、次の担い手を育てることが継承の鍵となる。
紀州東照宮から程近い雑賀小学校では、5年ほど前から授業で和歌祭を取り上げている。同実行委員会は、和歌祭四百年式年大祭の中山勝裕実行委員長が掲げた「未来へつなぐ」をテーマに、ことしは3部構成で実施。第1回は和歌山大学の村旭輝准教授が和歌祭の歴史講座、第2回は「摺鉦(すりがね)・太鼓」「母衣(ほろ)」「薙刀振」「雑賀踊」「御船歌」の各5種目の担い手や指導者によるワークショップが開かれ、児童が演舞を体験した。
最終の第3回は、同実行委員会の委員長を10年務めた保井顧問が4年1組28人に出前講座を行った。児童らは「毎年、同じ神輿を担ぐのか」「演目は昔から変わらないのか」「どれぐらいの人数が祭りに関わっているのか」と次々に質問。保井顧問は、神輿は1㌧以上あることや江戸時代初期には渡御行列が45種目以上あったことなどを解説し、「今も昔も変わらないのは、誰でも参加できる祭りだということ。だから大切に400年間、残っている」と語り掛けた。
担い手の思いにふれた西本桃子さんは「400年も受け継がれてきた祭りが地域にあったのはびっくりした」とにっこり。田伏諒音さんは「祭りに参加して、つないでいきたいと思った」とし、宮本朱音さんは「大切なお祭りだということがよく分かった」と笑顔。
保井顧問は「これまで祭りが残ってきたのも民衆の力。われわれ担い手が伝えていくことで、子どもたちが興味を持ってくれれば」と話した。
同実行委員会では、今後も要望があれば市内の小学校などで出前講座をしていきたいという。