半世紀にわたる集大成 吉田健一さんが初詩集
和歌山県串本町出身で大阪府熊取町在住の詩人・吉田健一さん(72)が初の詩集『砂宇宙』を出版した。大学時代からこれまでに書きつづった中から選んだ35編を集録。吉田さんは「半世紀以上にわたる詩作の集大成」と話している。
吉田さんが詩作に取り組み始めたのは、小学校3年生の頃。和歌山市内の小学校に転校した後、短い文章で情景を伝える詩に興味を持ち、新聞などに投稿するようになった。その後、進学した市立城東中学校、県立向陽高校で文学部に所属し、創作活動に励んだ。
吉田さんは「詩は、命ある言葉のみで表出された言語作品」とし、「現実とは違う世界で遊ぶ楽しさが魅力」と笑顔で話す。
大阪芸術大学に進むと、志を共にする仲間と切磋琢磨(せっさたくま)しながら、毎年同人誌を発行。卒業後は大阪府警に就職し、詩作からは遠のいたが、定年後に再び没頭。個人で活動する傍ら、大阪や県内の詩人の会にも参加する。
吉田さんは詩で「人間の孤独感、不条理さ」、そして「夢と現実が入り混じったイマジネーションの世界」を表現する。60代で書いた作品「異邦の海辺で」では、網を引く漁師の日常を描く一方で、異邦の海辺で起こった非日常的な出来事が独特な言葉選びで表現され、読み手の想像力をかき立てる。
詩集に掲載した写真は全て吉田さん自身が撮影。橋杭岩や田子の双島をはじめ、故郷・串本町の風景などが収められている。
吉田さんは「10年の間に、もう1冊詩集を出せれば」と目標を話し、きょうもペンを執る。
宮脇書店ロイネット和歌山店や宇治書店、帯伊書店で取り扱っている他、Amazonでも購入できる。