新たな地域産業に りら生「キノミノリ」再販
和歌山県紀美野町真国宮の、りら創造芸術高校の生徒たちが開発したオーガニック化粧品「マルチバーム キノミノリ」の第2弾が完成し、販売を始めた。同町で活動する各団体も協力することになり、新たな地域産業を生み出そうと、地域を挙げて動き出している。
キノミノリは、和ろうそくなどの良質な原料として、町内で広く栽培される「ブドウハゼ」のロウと、町木の「榧(カヤ)」を香料に使ったマルチバーム。森林を思わせる香りで、肌に塗ってもべたつかないのが特長。第1弾から改良を重ね、こめ油からホホバ種子油に変更した。
また、パッケージも新たに完成。同町の「手漉(す)き和紙工房あせりな」の和紙を使用した。一部はブドウハゼの房枝で染め、生徒がデザインしたブドウハゼの焼印も押した。
キノミノリは、地域の新たな特産品を開発し、産業を盛り上げようと、地域おこしなどに取り組む同校の部活動「りらファクトリー」に所属する生徒らが考案。昨年春に第1弾として100個限定で販売したところ、4日間で完売するなど好評だった。
ブドウハゼはウルシ科の樹木で、ハゼノキが突然変異した和歌山発祥の品種。ハゼノキの果実から採れる木蝋(もくろう)は、和ろうそくやおしろいなどの原料となる。
戦前に県指定天然記念物となっていたブドウハゼの原木は、再指定の申請がなく自動的に指定は解除されていたが、2017年に同校の生徒が枯死したとされていた原木を町内で発見し、20年1月に県天然記念物に再指定された。
再指定の盛り上がりを一時のものにせず、ブドウハゼの価値を高め活用できることはないかと生徒らが話し合い、化粧品の商品化を思い付いた。
実からの製蝋(せいろう)は、海南市の吉田製蝋所に依頼。同社は伝統的な製法「玉締め圧搾法」で、天然のブドウハゼの素材を生かした最高品質の木蝋を生産している。化粧品として使用するには木蝋から不純物を取り除いた「白蝋(はくろう)」にする必要があり、同社はキノミノリの生産を機に、木蝋を天日干しする白蝋の生産を77年ぶりに復活させた。
カヤは同町木に指定されており、全国でも有数の自生率を誇る。かんきつと森林系の香りが合わさったような独特の香りが楽しめる。
3年生の前岡若葉さん(18)は「地域の人との関わりが楽しくてやりがいがあった。今後はキノミノリシリーズを増やしたい」と笑顔で話している。