土砂流入、屋根瓦も被害 国宝の長保寺
2日の大雨で、和歌山県海南市下津町上の長保寺でも本堂の裏山が土砂崩れを起こして境内に流れ込み、屋根瓦が割れるなどの被害が出た。寺の本堂、塔、大門は国宝に、敷地全体は国の史跡に指定されているため、土砂の撤去作業などは国と相談し、対策を協議していく。現在、境内へは立ち入り禁止。完全復旧までのめどは立っていないという。
同寺は長保2年(1000)に建立されたと伝えられる紀州徳川家の菩提寺。国宝、重要文化財など1万点以上を有し、境内の敷地は1万5000坪にもおよぶ。
瑞樹正哲住職によると、2日午前中に境内の見回りに行ったところ問題はなかったが、午後2時ごろに法嗣(ほっし)の弘芳さんが確認すると、土砂崩れが起き、大量の水と土砂が流れてきていたという。
崩れたのは本堂裏山の一部。木が根からえぐれ、本堂の屋根に倒れた。
瑞樹住職は「最初は、あっけにとられて『きょとん』という感じだった。記録はないが、崩れた跡がないので寺の歴史の中で初めてのことだと思う」と話す。同寺には江戸時代に造られた墓の周りを巡る排水路がある。「これまで300年、台風、地震、災害を何度も乗り越えてきたが、びくともしていない。排水路が劣化したのか、想定以上の雨だったのか、その原因は分からない」と話す。
土砂が流れ込み、泥だらけになっていた石段は住職が高圧洗浄機で掃除したという。敷地内に咲く色とりどりのアジサイは、見る人がなく寂しそうに咲き誇っている。