県絶滅危惧種ニホンアカガエル 紀美野で発見
和歌山県の絶滅危惧Ⅰ類に指定されている、日本固有種の「ニホンアカガエル」が、ことし4月に紀美野町動木の休耕地で見つかった。近くに住む自然愛好家の男性が発見。県立自然博物館の高田賢人学芸員(26)は「県内で見つかるのは珍しく、紀美野町で発見されるのはさらに珍しいこと」と話している。
ニホンアカガエルは、体長3~7㌢ほどで、体色は赤褐色から茶色、背中に線模様があるのが特徴。本州や四国、九州などの水田に生息している。2~3月に産卵のため活動し、5月ごろは冬眠する。
県のレッドデータブック(両生類)では、絶滅指定のオオサンショウウオに次ぎ、絶滅の危機にある「絶滅危惧Ⅰ類」に指定されている希少な生き物。
発見された場所は、町役場の正面に位置する農業用ため池「樫河(かしこ)池」の下に広がる約1500坪の湿田の水路。水はけが悪く一年中、湿地状態の場所だという。
ことし3月末に近隣に住む自然愛好家の男性が同地付近を散策していたところ、2~3匹の赤色のカエルがいるのを発見。通常のカエルはこの時期は冬眠していることから、3月にカエルが活動していることを不思議に思った愛好家は、生き物に詳しい同町職員に相談した。
職員は「もしかするとニホンアカガエルでは」と思い、県の自然環境室に連絡。県は職員を派遣して現地調査を行った。生態サンプルを県立自然博物館へ持ち込み、論文や資料から調べたところ、「絶滅危惧Ⅰ類」のニホンアカガエルだと分かった。
同館によると、県内では、ニホンアカガエルは紀の川沿いに生息しているのを把握しているが、他県に比べて少ない数だという。高田学芸員は今回の発見を受け「爬虫(はちゅう)類、両生類担当としては、生態を解明するために研究していければ」と話す。
この場所には他にも、ツチガエルやニホンヒキガエル、アカハライモリなどの準絶滅危惧種が生息している可能性もあり、毎年、ホタル、キジの親子などの姿も見られるという。動木地区の大岡実世副区長(74)は「豊かな自然を子どもたちに残したい。町の魅力の一つになれば」と話す。
今回、ニホンアカガエルが見つかった場所では、太陽光発電施設の建設が予定されており、県は事業者に希少生物の保護、保全への協力を呼びかけている。
大岡区長は「アカガエルに注意して太陽光パネルの建設をお願いしたい。できるだけうまくこの場所を保全してもらえたら」と話している。