効果的に「霜降り豚肉」近大等が飼養技術改良
近畿大学生物理工学部(和歌山県紀の川市)食品安全工学科の白木琢磨准教授らの研究グループは、国内で最も多く生産されている食用豚の三元豚を効果的に霜降りにする「アミノ酸比率法」を用いた飼養技術を改良し、より汎用性の高い飼料での実現に成功したと発表した。
2003年、同学部の入江正和元教授(現独立行政法人家畜改良センター理事長)らにより、廃棄パンを利用した飼料「エコフィード」が食味の優れた霜降り豚肉を生み出すことが見出された。その後、入江氏と白木氏を代表とする農林水産省の研究事業により、飼料に含まれるリジンの量と粗タンパク質量の配合比が霜降り豚肉を作るために重要な要素であることが判明。効果的な配合による飼養技術を「アミノ酸比率法」と命名した。
エコフィードは利用が進んでいる一方で安定的な入手が困難であり、今回の研究では、飼料の安定性と試験の精度を高めるため、エコフィードよりも入手しやすい配合飼料を用い、より効果的なアミノ酸比率法の確立を目指した。
通常の配合飼料で肥育した三元豚のロースの粗脂肪(脂溶性のさまざまな成分を含む脂質)が4%程度であるのに対し、研究チームがアミノ酸比率法によって設計した飼料で肥育したロースの粗脂肪は8%程度まで上昇し、見た目にも霜降りになることが分かった。
研究チームは今回の成果をもとに、脂肪交雑(霜降りの度合い)を向上させるため、アミノ酸比率法の導入に関するガイドラインを作成し、全国の畜産関連団体に普及活動を行うとしている。
23年度には、一般農家での大規模実証試験も予定し、国産豚肉の高品質化を進め、国際競争力をアップさせる取り組みに大きな前進が期待されている。
白木氏は、牛肉については、霜降りを生み出すことで、日本固有の黒毛和種が高級ブランドとして世界に進出している一方、豚肉は日常的に家庭で食べられるテーブルミートとして、主に低価格化の追求がなされてきたと指摘。「今回作出された霜降り豚肉を世界にさきがけて『食べる』機会を得て、やはりおいしさは食肉においてとても重要な価値を生み出すことを実感した。われわれの作った豚肉が、新しいブランドとして日本全国に流通するのを期待している」とコメントしている。