フィリピン出身歌手 クリスティーナさん
「どれほど疲れていても、歌が私を元気にしてくれる」――。和歌山市で介護士として働きながら歌手活動をするフィリピン出身のクリスティーナさん(44)は20歳で歌手として来日。26歳で結婚し、歌をやめて4人の息子を育ててきたが、34歳で離婚。今は介護士の資格を取り生活を支えている。知人の勧めで出場した歌の大会で優勝し、再び歌い始めた。「和歌山で経験したつらさ、悲しみ、幸せを歌に込める」クリスティーナさんのライブでは聴く人が涙する。そんな彼女に歌への思いを聞いた。
クリスティーナさんには25、23、17、15歳の4人の息子がいる。現在は次男と四男との3人暮らし。昼間は同市の通所介護施設ケアネット大谷で働き、夜は週に3日、別の介護施設に勤務している。四男の理功さん(15)は高校2年生。野球部に所属し「たくさん食べるからお金がかかる。でも子どもは宝物」とクリスティーナさんは笑う。
元夫とは24歳で出会った。初めて本気で人を好きになり、2年間交際し結婚。歌をやめ家事と子育てに奮闘した。フィリピンとは全く違う生活、文化、子育てに戸惑いは尽きなかった。
特に苦労したのは日本の食事のメニューの多さ。なんとか慣れようと懸命に頑張った。周りの人たちに助けられ、子どもたちが学校から受け取るプリントの内容が分からないときは説明してもらったり、悩み事の相談に乗ってもらったりもした。そうした支えのおかげで、日本での生活を続けることができたといい「和歌山の人は本当に温かい」と感謝する。
34歳で離婚。同じ時期にフィリピンにいた母親を亡くし、心はボロボロになった。父親から帰って来てほしいと言われたが、帰国できずに父も亡くした。介護職に従事することについて「両親にできなかったことを、今している」と涙ぐむ。
ケアネットの和佐匡博社長は「彼女は常にポジティブで明るい。使命感が強く積極的にコミュニケーションを取っている」と仕事ぶりを評価している。
2018年に県知事杯歌謡選手権大会で優勝して以来、ステージの出演依頼が入るようになり、忙しい仕事の合間に歌手活動を再開。すでに1年後までスケジュールが決まっているという。
「ステージに立つと緊張するけれど、エネルギーが満ちあふれてくる」とクリスティーナさんは目を輝かせる。夢は、いつか大きなステージで歌うこと。
20日午後8時からは和歌山市和歌浦の和歌浦芸術区でライブを行う。フィリピンでヒットした、息子が悪の道に進むことを親が嘆く曲「ANAK(息子)」や、BEGINの「恋しくて」、斉藤和義の「歌うたいのバラッド」などを披露する。
チケットは1ドリンク込みで1000円。予約や問い合わせはライブを企画・主催する木村さん(℡090・1912・5824)。