特殊詐欺を防止 岩出市の理容店を表彰
特殊詐欺被害を未然に防いだとして岩出署は25日、和歌山県岩出市清水の理容店、ヘアーサロンロイドの上野正子さん(74)と智美さん(50)に感謝状を贈った。
2人は親子で理容店を経営。8月23日、正子さんが70代男性の散髪をしていると、男性の携帯電話に着信があった。男性は初めは穏やかな口調だったが、途中から手を震わせ、「お金はちゃんと払っている」「振り込み用紙を送ってくれるのか」などと話したという。
通話は20分程度続き、当時休憩中だった智美さんは聞こえてくる内容を不審に思い駆け付けた。親子で男性に事情を聞くと、NTTを名乗る相手から、未納料金があるなどといったショートメールが届き、その担当者という人物からの電話であるとのことだった。
智美さんは詐欺を疑い、「ショートメッセージで来ることはない。絶対に書面で来る」などと男性を説得して、特殊詐欺被害を未然に防止。男性から「すまなんだ。ありがとう」と感謝の言葉があったという。
贈呈式で岡田謙吾署長は、「お二方が特殊詐欺に関する正しい知識を備え、困っている人を見過ごしにせず、一歩前に出る勇気と思いやりを持って仕事をしていたことによるもの」と感謝。
智美さんは「感謝状をもらえてありがたいが、日常で普通のことをしたつもり」、正子さんは「特殊詐欺の情報は常に頭に入れている。地域のつながりが、特殊詐欺被害を防ぐと思う」などと話した。同店では日頃から、来店客とも特殊詐欺について話しているという。
同店は正子さんの夫の故・徳弘さんの代から40年以上、留置場での散髪を行っており、昨年、警察法施行記念表彰で感謝状を受け取っている。
同署は、理容店や病院での会話は特殊詐欺被害防止につながると考え、那賀医師会に8月から、啓発用のポスターやカードを配布。9月25日現在、同署管内での、ことしの特殊詐欺被害は9件で、被害額は456万7000円におよぶ。