染色家の田中さんに功労賞 海南市文化表彰

和歌山県海南市の2023年文化表彰受賞者が発表され、文化功労賞に有田市箕島の染色家、田中利恵子さん(66)が選ばれた。2日、同市役所で授賞式が行われ、田中さんは「たくさんの人の応援があって続けてこられた。健康に気を付けてこれからも染めていきたい」と喜んだ。

同表彰は文化賞、文化奨励賞、文化功労賞の3部門があり1979年から行われている。文化功労賞は、文化向上や発展に永きにわたり尽力した人に贈られる。

田中さんは、海南市冷水生まれ。21歳で染色を始め、ろうを防染材料とする「ろうけつ染め」技法を用い、山や木、海、川などをモチーフにさまざまな柄や深い色味の染色作品を手がける。

2000年の日展に初出品し初入選。日展での入選は15回を数え、10年には有田市文化奨励賞を受けた。

故郷の冷水地区では、08年から22年まで、江戸時代の土蔵を改築した「とこり工房」を主宰。ろうけつ染めの他、海南市特産のビワの葉から抽出した染料で染める「ビワ染め」による作品も創作している。

現在は、「ろうと染料の調和」の追究や創作活動、県、同市、和歌山市の美術展での工芸部門審査員として活躍している。

この日行われた表彰式で、神出市長は「県内では数少ない染色家。現在も表現の幅を広げるため染色の研究を続けられている。これまでのたゆまぬ努力と功績に対し深甚なる敬意を表し、市民の皆さんと共に賛辞をお贈りしたい」とあいさつ。

田中さんは「白い生地に染料が染まっていく様子が面白く、きょうまで続けてこられた。私の作品を見た方が何かを感じてもらえるよう日々精進したい」と感謝を述べ、ビワ染めの作品「鳥」を市に寄贈した。

作品を手に文化功労賞の田中さん㊧

作品を手に文化功労賞の田中さん㊧