パリッとした食感「ベニバラード」
前号では「巨峰」や「ピオーネ」を意識し育成された、赤色で大粒の果実が特徴の「クイーンニーナ」を取り上げた。今週も果実の色が赤い「ベニバラード」を紹介したい。
ベニバラードは1997年に山梨県甲府市で生まれた品種。欧州系の「バラディー」と米国系の「ゴールド」を交配させた「バラード」に「京秀」を交配し、その中から優れたものを育成したもの。果皮が赤く、パリッとした食感で皮ごと食べられる。
果実は大粒で上下方向に長い楕円(だえん)形をしている。国内で一般的な巨峰などと比べ、ぶどう特有の香り(フォクシー香)がない。
食してみると、果肉は硬めで歯ざわりがあるほど。シャキシャキとした食感で柔らかさはなく、果汁も多くないものの、酸味が少ないことから甘さを感じることができる。糖度は20度を超えるものもあり、ぶどうとしては糖度が高い部類であるが、上品な甘さとなっている。
栽培時に種なしにするジベレリン処理を行うと形が崩れやすいことから、種ありの形で出回ることが多い。種なしが主流であるため、これが弱点となって栽培が広がらないという事実がある。
農水省統計によると全国の栽培面積はわずか1・7㌶。統計上は栽培地が長野県のみ数値に表れているだけで、他の地域での栽培は少ないのが現状。極早生の品種であるため、7月下旬から8月下旬にかけて収穫される。
筆者は8月中旬ごろに県内の産直市場で購入。巨峰などと比べ、色も形も特異であり、その味わいに興味を持って購入した。「紅バラード」の表記で販売され、果実の赤色を意識しているものと思われる。
ごくわずかだけ栽培されている希少品種。一般的なぶどうとは異なる食感を味わいたい方は、ぜひ挑戦してみてほしい。
(次田尚弘/和歌山市)