日々進化を続ける「ぶどう」
これまで、和歌山県内で収穫される13種類のぶどうを紹介してきた。色、形、味わいが異なるさまざまな品種が存在。今週は近年のぶどうを取り巻く環境と展望について考えたい。
このシリーズの冒頭で取り上げたのが、150年以上の歴史をもつ「デラウェア」。有田エリアを中心に観光農園での収穫体験が盛んな「巨峰」と共に、日本の食卓を彩る、ぶどうの代表格として親しまれてきた。
しかし、日本人の嗜好の変化から、大粒で糖度が高く、香りが優れる品種の台頭が進み、巨峰から派生した「ピオーネ」や「紫玉」をはじめ、1粒30㌘を超える「藤稔」などが人気を博すように。欧米系の品種が融合した「シャインマスカット」の登場で、ぶどうの高級志向も高まり、今や、ぶどうは高級フルーツとなった。
さまざまな種類のぶどうが店頭をにぎわせる時代となったが、お盆前後に収穫のピークを迎える従来の品種と差をつけるため、収穫時期を工夫したものも登場。かつては、短い期間でしか味わえなかったが、品種は異なるものの3カ月程度、何かしらのぶどうが存在する状況である。
気候変動に対応した新品種の登場も見られる。「ブラックビート」は高温による着色不良を防ぐため、8月以前に収穫ができ、温暖な地域における、ぶどう栽培の維持拡大に貢献。市場や気候など、さまざまな環境変化に合わせ、ぶどうは日々進化を続けている。
全国的に見れば、ぶどうの一大産地というわけではない和歌山県であるが、代表格とされる巨峰から希少品種まで、さまざまな種類が栽培されている。
紀北エリアは京阪神から容易にアクセスでき、観光資源としての役割もある。全ての品種を取り上げることはできなかったが、来夏、店頭でぶどうを見た時は、品種ごとの開発背景や希少度合いにふれながら、その味わいを楽しんでほしい。
(次田尚弘/和歌山市)