新品種の登録も「向山温州」

貯蔵されて出回る「向山温州」

前号では、静岡を代表する品種で、下津みかんと同様に貯蔵された後に出荷される「青島温州」を取り上げた。貯蔵技術は晩生(おくて)の品種に限らず、一部の中生(なかて)の品種でも行われている。今週は、和歌山県内で発見され、親しまれている「向山(むかいやま)温州」を紹介したい。
向山温州は1934年に、現在のかつらぎ町の向山氏の農園で発見された品種。尾張系の温州ミカンの枝替わりとされ、中生における代表種として知られる。
一般的に中生は12月中旬から下旬ごろにかけて収穫され、年内に出荷されるケースが多く、お正月に食べるミカンがこれにあたる。向山温州は中生の中でも遅めの時期に収穫され、一部の農家では、すぐに出荷せず年明けまで貯蔵し、時期をずらして1月中旬から下旬ごろに出荷される。晩生ほどではないが、早生に比べるとじょうのうが厚いことから、貯蔵が可能な品種である。
サイズはさまざまであるが、大きくなるにつれ浮皮の発生が見られる傾向。小さめの方が張りがあり、中生らしい味わいがある。食してみると、糖度は高めで酸味は少ない。貯蔵されることにより、さらに酸味が減り、より濃厚な食味になる。
長年、和歌山県内で栽培されてきた向山温州であるが、1960年ごろ、向山温州の苗木として販売されていたものの中に、じょうのうが薄く、食味に優れた枝替わりの品種を発見。その後、有田市宮原町で育成され、50年もの時を経た2014年に「きゅうき」という名前で登録された品種がある。浮皮の発生が少なく、早生のような食味が特徴で、県のオリジナル品種として注目されている。
来シーズンは、年末から年始にかけて出回る向山温州の魅力にふれてみてほしい。(次田尚弘/和歌山市)