パパチカ「塗り絵」 最終号の第10弾完成

父親たちのボランティアサークル「パパチカ」(和歌山市、額田康夫代表)が制作している「わかやまのぬりえ」の最終号となる第10弾が完成した。県内の名所名産などを題材に、家族で塗って楽しみながら和歌山の魅力に親しめる人気シリーズで、累計15万冊以上を無料配布してきた。冊子の制作は今回でひと区切りとなるが、今後も塗り絵を中心に活動を続けていく。

親子一緒に地域愛 無料配布15万冊超

パパチカは、パパの力で地域と子育てを盛り上げようと2013年2月に結成し、現在のメンバーは約10人。父親がもっと子育てに参加し、和歌山の魅力をもっと知ってもらおうとの思いから、親子で一緒に地域愛を育む塗り絵のアイデアが生まれた。

同年夏に最初のイラスト「和歌山城」が完成し、和歌山市の補助事業の採択を受け、第1弾の塗り絵集を発刊したのが14年2月。市内の幼稚園や保育所の子どもたちに1万冊を無料で配布したところ大好評で、続編を作ることに。第2弾以降は企業の協賛を募って制作し、配布地域も紀の川市、新宮市など県内各地に広がり、シリーズ10冊の累計で塗り絵は107種類、配布した冊子は15万冊を超えた。

活動を始めた当初は、「塗り絵なんか作ってどうするの」と言われたり、冊子配布の協力依頼をいぶかしがられたり、懐疑的な反応も少なくなかったと代表の額田さん(50)は振り返る。しかし、第1号を楽しんだ人たちから「続けてほしい」との声が届き、次号を心待ちにする人が増えていった。

愛らしいイラスト 地域発見の窓口に

塗り絵には和歌山の歴史や伝統工芸なども描かれ、額田さんは「地元の文化を知るきっかけにもなっている。『和歌山のガイドブックみたい』という声も頂き、地域を発見する窓口にしてもらえているのはうれしい」と笑顔で話す。

会員の藤田征宏さん(43)が描くイラストは、優しい線で和歌山の名所名産を表現し、笑顔いっぱいで満喫する2人の子どもの愛らしい姿が人気。「昔から愛着を持たれてきたものを描きたい。関わっている人が喜んでくれるイメージをしながら描いてきた」と藤田さんは話す。

描く対象は時間をかけて下調べする。細かく描き込むのは簡単だが、塗って楽しみやすいように、うまく細部を省き、部分的に誇張するなどデフォルメするのが工夫のしどころ。額田さんも、自身が出す「無茶ぶり」のアイデアを作品に仕上げてくれる藤田さんに厚い信頼と感謝を寄せる。

21年からは県国際交流センターと連携し、アジアの伝統的スイーツやドイツのクリスマス、多民族が暮らすナイジェリアの暮らしなどをテーマにした「世界のぬりえ」も制作。活動はより幅広くなっている。

社会の変化を実感 県との新コラボも

節目の「わかやまのぬりえ」第10号は、和歌山市、紀の川筋、有田地域、御坊地域、西牟婁、東牟婁など県内の地方ごとに魅力をまとめた見開きの大きなイラスト7枚となっている。

完成を記念し、額田さんと会員らは岸本周平知事を表敬訪問し、シリーズを贈呈。岸本知事は、自身も第1号を持っていると話し、シリーズを眺めながら、「素晴らしい。継続は力なりですね」と活動をたたえた。

父親の子育て参加についての10年間での変化も話題になり、額田さんは、10年前には父親の子育て参加の呼びかけに「違和感がある」などと言われたこともあったとし、藤田さんは、子育てイベントに参加する父親が増えているなど、社会の変化を感じていることを話した。

岸本知事は、「こどもまんなか社会」に向けて県が大きく機構改革を行ったことなどを紹介。「皆さんとコラボできることがあるんじゃないか。新年度に何かしましょう」と呼びかけた。

これまでに制作した塗り絵は、パパチカのホームページからダウンロードできる。

 

談笑するパパチカの皆さん