粉河に「IKORA」 まちなか図書館オープン
地域の住民が運営し、誰でも無料で利用できる「まちなか図書館IKORA(いこら)」が、和歌山県紀の川市粉河のとんまか通りに開館した。今後は読み聞かせや折り紙教室、コンサートなどのイベントも企画中。本を通じた地域交流の新たな拠点を目指す。
図書館開設に向けて動き出したのは2年前。粉河でまちづくりに取り組む田中秀樹さん(71)と楠富晴さん(71)が、地域に若い世代が少なくなり、まちの活気が失われつつあることを寂しく思い、「さまざまな世代が集える図書館があれば」「図書を通したコミュニティーの場をつくりたい」と準備を進めてきた。
場所は、約30年前まで洋装店だった空き店舗の1階部分を活用。名称は、和歌山弁で「行こうよ」を意味する「いこら」とし、気軽に立ち寄れるようにと思いを込めた。
書籍は地域の人たちから寄贈されたものが中心で、旅行誌や小説、紙芝居、漫画などと幅広いジャンルの約1000冊が並ぶ。閲覧だけでなく無料の貸し出しもする。
運営は、粉河の住民が協力して担う。また、本棚の一部を個人や団体に貸し出す「ワンボックス館長」制度を導入。区切られたスペースに定額を支払うと、自身のお薦め本を自由に並べることができるもので、運営費に充てる。
開館に向けて、ことし1月から地域住民らで協力し、施設の掃除や書架の設置、書籍の陳列など準備。紀北工業高校(橋本市)ものづくり研究部の生徒5人が書架3台を制作し、寄贈するなど、若い世代のサポートも大きな力になった。
館内には、利用者が輪になって座れる机1台を設置し、陶芸作品や絵画なども展示、販売。手作りの温かみが伝わるような空間になっている。
このほど行われた開館式には地域住民、那賀振興局や紀の川市の職員ら約20人が出席。田中さんは「これからは皆さんが参加していただいて、いろいろな企画をここで実現していただきたい」と呼びかけた。
楠さんは「年代を超えて憩い、集える語り場としての図書館を目指したい」と話し、「気楽に立ち寄れ、にぎわいのある場所にできれば」と願っている。
開館時間は平日午後1時ごろから4時ごろまで。ワンボックス館長は現在も募集中。問い合わせは楠さん(℡0736・73・2061)。