さよなら和歌浦小劇場 46年の歴史に幕
演劇好きな人たちに親しまれてきた和歌山市和歌浦南の和歌浦小劇場が5月で閉館する。同劇場を拠点に活動してきたアマチュア劇団「演劇集団和歌山」が27日から5月上旬にかけて「さよなら公演」を行い、46年の歴史に幕を閉じる。
同劇団は「地域に根ざした芝居づくり」を掲げ、1970年に結成。78年からかまぼこを入れる木箱を作る工場だった場所を借り、舞台公演や稽古を行う活動拠点としてきた。現代作家の作品や海外の古典、和歌山の歴史を題材にした創作劇などさまざまな作品に取り組み、毎年1回同劇場で公演を続けてきた。
閉館の理由は、劇場がある場所に別の建物の建設が決まったこと。同劇団は6月から同市北町の古い建具工場を再利用したアートスペース「ゲキノバきたまち」に拠点を移し、活動を続ける。
同劇団に50年所属する楠本幸男さん(69)は「自分たちでペンキを塗ったりしながら時間をかけてすごいエネルギーを注いで手作りした劇場で思い入れは深い」と感慨深げ。「最後はお祭りのようににぎやかな舞台にしたい」と、新作の脚本を書き上げた。
タイトルは「ちょうど時間となりました。」。物語は大正15年12月、天皇の崩御により昭和に変わっていく境目が舞台。和歌浦にかつてあった芝居小屋「若松座」をモデルに、旅芝居一座や浪曲師が入り乱れ、花形役者がいなくなったり、芝居が続かなくなったり、次から次へと巻き起こるピンチを一座はどう乗り切るか――というストーリー。
これまで同劇場で上演された作品の風味を取り入れ、ピアノの生演奏や歌も披露するという。
出演は、同劇団の役者10人と、元劇団員やこれまで交流してきた他の劇団のメンバーなど総勢21人。
観客として同劇場に通い詰めていた中島嘉次松さん(67)は、「ここは役者の息遣いが聞こえるほど舞台と客席の距離が近いのが魅力」と話し、今回の作品では役者として舞台に立つ。演じるのは、舞台を見ていたら興奮して舞台に上がり主役を殴ってしまう人の役だという。
演出を手がける山入桂吾さん(58)は「40人の観客の前で21人の役者が舞台で暴れまくります。全員力を合わせて劇場の最後を締めくくる迫力ある楽しい舞台にしますのでぜひお越しください」と呼びかけている。
日程は27~29日と、5月3~5日の全10公演。時間は午後1時~、6時~(※一部、日によって違う)、チケットは前売り一般2500円、学生1500円。当日2800円、学生1800円。
チケット取り扱いは県民文化会館、和歌山城ホール、和歌の浦アート・キューブ、和歌山演劇鑑賞会。
問い合わせは演劇集団和歌山(℡073・445・4537、メールenshuwakayama@gmail.com)。